時効の主張・援用についての実務知識|ニッテレ債権回収やアビリオ債権回収への時効の主張なら、司法書士あかね法務事務所

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   《もっと詳しい時効の知識と実務》

 消滅時効の基礎知識よりも多少詳しい話に、実務経験からのアドバイスなども交えながら説明します。


《「私の借金は時効でしょうか?」のご質問に対する回答》

 ご相談の際に、「私の借金は時効でしょうか?」と、ご質問を頂くことは多々あります。お話しを伺って時効の可能性が高いと判断しても、次のような回答となります。

 「今、**さんからご提供頂いている情報だけから判断すれば時効だと思います。ただ、債権者は**さんが気が付いていない時効を否定する情報を持っているかもしれません。ですので、ご依頼を頂いても時効とはならない場合があります。その点を予めご理解ください」

 債権者は、相談者が気づいていない又は忘れている情報をもっているかもしれません。実際に依頼を受けて業務をしてみなければ分からないことが多々あります。

 「時効になるなら、依頼したい」と、言われる方もいらっしゃますが、ご相談の際に時効になると確約や保証はできない為、ご依頼はお受けできなくなります。


 実際に依頼をお受けした後、債権者から時効を否定する理由が開示されることはあります。時効を否定する理由として一番多いのは、「債務名義」があることです。

 債務名義とは、強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のことです。強制執行を行うには、債務名義が必要です。

 貸金業者や債権回収会社が持っている可能性のある代表的な債務名義としては、簡易裁判所の訴訟や支払督促が確定していることが挙げられます。


 債務名義の有無が不明の方は、債権者に問い合わせてみることも一つの手段です。聞けるのであれば、「いつ」「どこの裁判所」で取得された債務名義かも知りたい情報です。

 ただ、債権者に問い合わせる際に、「債務名義の有無」以外について安易に会話をしないでください。債務の承認と認識されて時効を否定されるかもしれませんので、債務名義の有無の確認以外の話しはされないよう、ご注意ください。


 《自分が知らないうちに裁判をされている?》

 時効の主張をご依頼頂いた後に相手に債権調査をします。すると、訴訟をされていて判決を取得されているケースがあります。

 もちろん、依頼の際に「裁判上の手続きはされていますか?」と聞きますが、それでも訴訟等の裁判上の手続きがされていて時効が中断している事案があります。訴訟など裁判上の手続きを取られている場合は民法174条の2の規定により「判決確定日の翌日から10年」が時効となります。「支払督促」という裁判所の手続きを無視しても同様に時効は中断します。

 当事務所の場合は時効になっていなくても相手と交渉をして和解をする業務が可能なので、時効でないからといって中途半端に終わることはありません。なお、このような代理業務は行政書士ではできません。認定司法書士か弁護士のみです。

 さて、「知らない間に訴訟をされていることなんてあるのですか?」というご質問はよく頂きますので解説してみます。結論としては原則として知らない間に訴訟がされていると言うことはないはずですが、例外があります。

 訴状は、「特別送達」という厳密な郵便により送達されます。郵便局員が手渡しで配達されることが原則ですが、本人が不在や居留守の場合等に家族が受け取ると送達がされたことになります。ご家庭の状況によっては「家族が訴状を受け取って本人に知らせていない」こともあり得るので、ここで訴訟が進行するのを本人が知らなかったということは起こりえるかもしれません。なお、「休日夜間の送達」「就業場所への送達」もあります。

 受取がなくても送達がされたとする方法があります。 「郵便に付する送達」と呼ばれる送達です。通常の送達によっても送達が出来ない場合にでき、訴状の発送をもって受取があったとみなしてしまいます。この方法によると本人が受け取りをしなくても訴訟は進行してしまいます。さらに「公示送達」という方法があります。これはあらゆる手段を尽くしても居場所が分からない場合になされます。官報に掲載し、裁判所に一定期間の掲示をすることにより送達の効力が生じます。


 実際に知らないうちに裁判をされている事案でもっとも多いと思うのは、「訴状を受け取ったけど忘れている」、「受け取っても開封せずに無視をする」ことではないかと思います。他にもたくさんの請求書などを日々に受け取っていて無視をするということを繰り返しているので、感覚が麻痺してしまい、郵便物程度では何も対応しないということも考えられます。次にあり得るのは「家族や同居人が訴状を受け取ってしまい本人に知らせていない」事だろうと思います。

 「郵便に付する送達」がされることもあり得ますが、現地調査を行い、調査報告書を裁判所に提出するのが実務上の運用となっています。張り込んだり、近隣の聞き込みを行ったりと探偵のようなことまでします。雑な調査では裁判所が受け付けてくれません。よって、大手の貸金業者や債権回収会社が常にそこまで行っているかと言えば疑問です。ただ、過去は貸金業者が家まで頻繁に訪問することはよくあったことですし、それからすれば人的コストと利益衡量して行うかもれません。なお、「公示送達」となるとさらに申し立てる側のハードルが上がるので、大手の貸金業者や債権回収会社が少額債権の為に行うことはまずないとは思います。



 《訴状や簡裁の支払督促を無視するのはハイリスク》

 訴状や簡易裁判所からの支払督促を受け取っていなくても裁判所の手続きが始まってしまう場合があります。

 それが、民事訴訟法107条1項による書留郵便に付する送達です。

 裁判所からの通知を無視することはハイリスクです。もし、時効の主張をできたのに裁判所の手続きが確定してしまえば、時効の援用はほぼ困難になります。

 受任後に判明する時効にならない理由として、過去に裁判所の手続きがされていたことが多く、苦慮するところです。ただ、多いといっても受任数の1割程度です。

 また、時効のご相談時に「過去に裁判所の手続きがされていないか」は必ず聞きます。ご相談の際に、「そういったことはない」「記憶にない」「裁判所からの封筒は見たことがない」とお伺いし、時効の可能性ありと判断して着手します。

 しかし、着手後に、債権者に情報開示を求めたり、時効援用通知を送ると、過去に裁判所の手続きがされていた事実が開示されることがあります。

 ご相談者にとっては、過去、債権者からの通知は多く、無視をする感覚が日常的になってしまっている場合が多いのは理解しています。ただ、裁判所からの送付物がくれば、相当のインパクトが残るはずなのですが、一切記憶にもない方が相当多い事実に不思議に思っています。送達の際に不在であっても、不在票を見れば裁判所からだと分かるはずです。

 本人としては受け取りを拒否している実感はあまりないのだとは思います。それが裁判所の手続きをされた記憶がないということにつながるのだと感じます。

 ただ、裁判所からの書類は特別送達で、受け取りが必要になりますので、不在票が残されます。郵便局にある裁判所からの送付物を自ら受領しようとせず、書留に付する郵便の手続きをされてしまっている場合があると思います。


《どうすれば時効になるのか?》

 「どうすれば時効となるのか?」と質問を頂く場合があります。もちろん、形式的な要件は答えられますが、上記の質問をされる方は、実際に自分の事案が時効となるか否かを聞きたいのだと思います。

 私としては個別の事案について実際に時効になるのか否かは答えようがありません。

 なぜなら、債権者次第の部分が大きいからです。そもそも、債務を延滞して待てば時効になるなら、誰も返済しません。裁判所の手続きを行い、強制的に時効を中断させることもできます。

 時効になる方はもちろんいます。実際に、私も時効援用をたくさん手掛けています。

 ただ、気が付いたら時効援用の条件を満たしていたという方がほとんどです。狙って時効にしている方はあまりいませんし、狙えば確実に時効にできるものでもありません。

 あえて、時効を待つというのはリスクが高いと思います。


 《貸金業者や債権回収会社が自宅に訪問されたら・・》

 債権回収の為に自宅を訪問することもあるようですが、その際に、少額でも支払ってしまうと後日に時効を主張することが困難になります。いきなり訪問されたり、強い文言の請求書を見るとすぐに少しでも支払わないといけない気持ちになると思いますが、一拍置いて、時効期間が経過していないかどうかを考えてください。

 いきなり訪問をされた場合は、お金を借りている立場としてはなかなか何も支払わずに「帰ってくれ」とは言い難いと思いますし、相手も「手ぶらでは帰れないので少額でも支払ってくれ」と言ってくると思いますが、時効期間が経過しているのであれば、支払ってはいけません。時効期間が経過していないかどうかを見極めてから、次の行動を考えてください。なお、認定司法書士が依頼を受けている間に依頼人の自宅に貸金業者や債権回収会社の社員が訪問をすることは、ありません。時効期間が経過していたら早めにご依頼ください。


 《時効を待った方がよいのか?》

 「今まで何年も連絡のなかった債権回収会社や貸金業者から消滅時効期間5年の間際になって急に催告書が送られ始めた」というよくある事例があります。この事例を検証してみます。

 消滅時効5年の直前に催告があった場合は6か月ほど時効期間が延びます。つまり、最大で5年6か月の経過が必要ということになります。ただ、催告の日から6か月以内に訴訟等の裁判上の請求をしなければなりません。今回の事例の場合は相手は時効期間を意識しており訴訟も視野に入れている可能性が高いです。今まで連絡がないのに消滅時効期間の直前に催告をしてくるということは時効期間をきちんと管理しているということだと思います。

 催告は何度も繰り返せばその都度、6か月の時効の延長がされるという訳ではないので、5年6か月を待てば時効になるという選択もあり得ますが、期日管理をしっかりしている債権回収会社や貸金業者であれば催告から6か月以内に訴訟等の裁判上の請求をしてくると思います。その典型例が上記で述べた、「今まで連絡のなかった債権回収会社や貸金業者から消滅時効期間の間際になって急に催告書が送られてくる」と言うことだと思います。

 訴訟をされると債権回収会社や貸金業者は態度を硬化させることが多いです。訴訟前の段階であれば遅延損害金のカットなどにも応じてくれたりすることもありますが、訴訟後の交渉では色よい返事はもらえなくなります。債権回収会社や貸金業者にとって貸金返還請求訴訟は、毎日食べるご飯のようになんの負担を感じることなく行ってきます。「訴訟までは起こさないだろう」と高をくくっていると平気で訴訟をされますのでご注意ください。

 催告書を送ってきて6か月を経過しようとしていても、何らの裁判上の請求もしてこない貸金業者なども実際に居るので待つことがよいのかどうかは判断ができませんが今回の事例の場合は債権回収会社や貸金業者は時効期間を意識していると思いますので、「待つ」、というのはあまり得策ではないと思います。もう一度言っておきますが、訴訟をされると和解の条件は厳しくなります。


 《時効を待った方がよいのか?2》

 時効期間が経過するのを待つかどうかについては本人の判断次第ですが、待つ場合のデメリットを申し上げなければなりません。時効を待つということは、それだけ時間が経過するということであり、遅延損害金は日々、増えていることを認識してください。

 もし、時効期間が経過する前に訴訟や支払督促などの裁判上の手続きをされれば、時効を主張できません。また、それまでに遅延損害金が膨大な金額になっている懸念もあります。時効を待つのは一種の賭けになってしまう点は否めません。ただ、時効を待つという手段を選択して実際に時効になっている方もいますので、先に述べたリスクを十分認識の上で判断したほうが良いと思います。

 以前に、司法書士や弁護士に相談したら、「放っておけばよい」と言われたから、そのようにしておいたのだが、時効期間前に訴訟をされてしまった、という事例をよく聞きます。酷い例だと、報酬になる過払い金の請求先だけを受任して、他は、「払えないなら、放っておけばよい」と言われていることもあります。

 先に述べたように、「放っておけばよい」だけのアドバイスは説明が不十分過ぎます。待てば、遅延損害金が膨らみますし、そもそも、待てば、時効になるとも限りません。

 また、払えないのであれば、自己破産なり個人再生なりをする事も選択肢のひとつです。「払えないから放っておく」としても、デメリットを説明し、本人がそれを認識した上で、「払えないから放っておく。」のは、本人の意思としては尊重するところではあります。


《放置をすればよい、というアドバイスは無責任》

 ご相談者の中には既に他の法律家に相談されたことがある方もいます。「放っておけばよい」と法律家に言われた方が多いことに驚きます。

 まず、延滞した借金を放っておくと、遅延損害金が日々膨らんでいきます。また、放っておいても時効は成立しません。時効は主張(援用)しなければなりません。

 「放っておけばよい」と言われ、放置した挙句に相手が強硬な態度にでるようになって債務の承認をしてしまい、時効援用が出来なくなった方もいます。

 また、訴訟の手続きをされても放置してしまい、時効援用の機会を失ってしまった方もいます。時効の要件を満たしているのに放置をしておくのは、ハイリスクです。


 《時効を検討するなら、訴状に同封されている答弁書を安易に提出してはいけない》

 時効期間を経過しているにもかかわらず、訴訟をされた事案で、本人が債務を承認するような答弁書を提出してしまった為に、時効の援用が困難になった事例を見かけます。

 裁判所から送られてくる訴状に同封されている定型の答弁書には、分割払いを求める記載欄があります。多くの方は、時効を考えずに、分割返済を認めてほしいばかりに、その欄に記載をして、裁判所に提出してしまいます。(支払督促には定型の異議申立書が同封されていますが同様です。

 安易に分割返済を希望する旨の答弁をしてしまえば、時効の援用が認められなくなる可能性が高くなります。ご自身での安易な対応は、取り返しのつかない事態を招きかねません。

 裁判所は、公平中立な立場が求められますので、時効期間が経過していたとしても、指摘はまずしてくれません。本人が時効になっていることを知らなければ、裁判はそのまま終わってしまいます。裁判所が不利益のないように時効になっていることを教えてくれるだろう、と思うのは大きな間違いです。

 ご自身の安易な対応で時効が主張できなくなった事例を数多く見てきています。間違った対応で取り返しのつかない事態を招かない為にも、時効の主張は法律専門職にご依頼されることをお勧めします。ちなみに、専門職は裁判所から同封されてきた定型の書類を利用することはありません。法的知識を基にの作成しています。


 《時効となるのは、なぜなのか?》

 時効を狙っている方は特に関心がある事かもしれません。ただ最初に言っておきますが、逃げれば時効になるという訳ではなく、全ての方に当てはまることでもない点、予めご承知おき下さい。

 債権者が、請求書を送るにも、訴訟をするにも、債務者の住所を把握することが大前提なので、債権者にとって、郵便物が債務者に届くかどうかは非常に重要です。

 債権者は、正当な理由であれば、債務者の住民票等を取得することが出来ます。よって、債権者は、住民票に記載のある住所を知ることが出来ます。債務者の住民票の住所はチェックされているので、住民票を移動すると、今まで請求がなかったのに急に請求が始まることがあります。

 請求文書を送付することでプレッシャーをかけて支払を促す効果があることは、もちろんです。請求をして、債権者が返済をするなど債務を承認する行為すれば、時効は中断してしますが、請求書を送っても電話連絡をしても徹底的に債務者に無視されてしまえば、いつかは時効となってしまいます。債権者が請求を無視する債務者にとる対抗策が訴訟や支払督促です。

 債権者にとって、時効を防ぐ為に一番重要な事は、訴訟など裁判上の手続きが、容易に出来るかどうかです。以降、訴訟で説明しますが、支払督促の手続きも含みます。

 債務者が請求の文書や連絡を無視していても、訴訟をして、判決を得れば、民法174条の2の規定により「判決確定日の翌日から10年」が時効となります。時効の中断だけさせておけば、債権者はじっくり攻めればよいのです。

 ここで、一般の方には「訴訟等をすれば時効を中断させることができるのに、なぜ債権者はしないのか?」、と疑問が生じると思います。簡単に言えば、「容易に訴訟等が出来ない債務者がいるから」です。言い換えれば、訴状等の送達が困難な方がいるからです。

 先に述べたように債権者は、住民票等を取得することが出来ます。債権者は、住所を把握することができるので、住民票に記載の住所に債務者が住んでいれば、訴訟をしやすくなります。

 しかし、住民票に記載の住所に債務者が住んでいるとは限りません。この部分が時効となるか否かの大きな分岐点となります。実際に住んでいる居所は住民票に記載の住所の場所とは別であることは、時効を狙っている方でなくても世間一般よくあります。

 訴訟をするためには訴状を債務者に「送達」できなければなりません。どこに送達するかは債権者が調べて裁判所に伝えなければなりません。住民票に記載の住所以外に住んでいる場合、それを探すのは、かなり困難です。送達が出来なければ、訴訟による時効の中断もなく、結果、徹底的に無視をしている債務者には時効が成立することがあり得るということになります。

 他、同居人たる家族等が訴状を受け取っていると、本人に送達されたとされてしまうことがあります。家族など訴状を受け取ることが出来る方を「わきまえのある者」と呼びます。また、通常の送達によっても送達が出来ない場合、訴状の発送をもって受取があったとみなしてしまう「郵便に付する送達」もあります。最終的な手段として、官報に掲載し、裁判所に一定期間の掲示をすることにより送達の効力が生じる「公示送達」など、各種の送達方法があります。

 しかし、通常の送達以外は、訴訟をする債権者側のハードルが上がるので、大手の貸金業者や信販会社、債権回収会社が少額債権の為に、コストをかけて債務者の居場所を徹底的に調査をすることを、必ずしもしていないのが現実です。債権者の費用対効果の問題と、民事訴訟の実務の狭間で、時効となる債権が出現しているのです。

 なお、本説明は住民票を動かさないことを推奨するものではありません。また、出来る限り分かりやすく説明しているので、表現が法的に正確ではない部分もある点はご了承ください。


 《時効が成立する確率はどの位?》

 ご相談者から「自分の事案が時効になる確率はどの位ですか?」と聞かれることがあります。事案の内容をお聞きして、時効が成立する見通しや可能性についてはお話ししますが、個別の事案について時効が成立するか否かをパーセントで表現は難しいです。

 あえて答えるとすれば、「時効の要件を満たしていれば100%です」「時効の要件を満たしていない場合は0%」です。債務の承認など時効の中断に争いがある場合、訴訟によることになり裁判官の判断次第ですが、結論をパーセントで示すことは困難です。

 依頼をお受けした後でしか見えてこない事実もあったりしますので、相談時には、実際に業務を行ってみないと時効になるか否かは分からないとしか言えません。

 依頼を受ける際に断言をすることはしませんし、していけないと思っています。ただ、冒頭にも述べましたが、相談時に判明している事実から、時効が成立する見通しや可能性についてはお話しします。

 私が時効の可能性が高いと指摘した事案は、弊所の受任した統計上では9割は時効が成立しています。(ご自身の事案が9割の確率で時効になるという意味ではありません。)残り1割は、依頼後に調査の結果、時効期間が足りなかったり、時効の中断理由があった等の事実が判明して時効にはならない事案でした。


《債権者は債務者の住所をどのように突き止めるのか?》

 債権者は債務者が住民票を移すと、とたんに請求をしてくることがあります。債権者は債務者の住民票を取得できるからです。では、どうやって債権者は住所を調べるのでしょうか?

 戸籍や住民票は正当な理由があり、その理由の範囲内で利害関係人が取得できるようになっています。債権者は債権回収や死亡債務者の相続人特定という正当な理由があるためにそれらを取得して、住所をつきとめることができます。

 ただし、債権回収や死亡債務者の相続人特定という理由だけではなく、具体的な理由を示す必要があり、利害関係書類や請求者と所属会社の確認書類の提出などが求められ、昔と異なってかなり取扱いは厳重になっています。

 根拠条文は以下の通りです。

 戸籍法第10条の2(第三者による戸籍謄本等の交付請求)により、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由を明らかにして請求することができます。

 住民基本台帳法第12条の3(本人等以外の者の申出による住民票の写し等の交付)により、自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者は相当の理由を示して請求することができます。


 《自動車ローンと時効の援用について》

 車のローンについての時効の相談がありますが、車のローンも時効となります。時効の期間は信販会社の自動車ローンであれば、通常、最終取引から約5年程度で時効となります。

 ただ、ローン会社かディーラーに所有権が留保されている場合、「車の所有権」は別問題です

 自動車を割賦で購入する時は通常、購入者は使用者となっているだけでローン会社かディーラーに所有権が留保されています。ローンを完済したら晴れて「自分の物」となる仕組みです。(最初からご自身が所有者になっている場合もあります)

 実際に訴訟となった件の訴状も見ますが、訴状ではローン残額と遅延損害金の支払いに加えて、自動車の引き渡しも求められている事があります。ただ、大半は、車両は引き上げが既になされており、ローンの残高のみが裁判となるケースです。

 所有権は消滅時効にはかかりません。取得時効の余地はありますが、善意無過失の場合は10年、それ以外の場合20年間所有の意思を持って平穏かつ公然に占有する必要があります。

 自動車は登録の制度があり、車検の手続きもありますので、取得時効を満たすには20年もの歳月を要することになります。それでも取得時効の要件を全て満たすか否かは個々の事案によります。

 なお、自動車ローンを滞納して、ローン会社が債権回収会社に債権譲渡している事案も多いです。時効を主張するような事案は債権回収会社を相手とすることが多いのが私の実感です。

 ローン会社が債権回収会社に債権譲渡をする際の債権譲渡契約を訴訟資料の中に添付されており読んだことがありますが、車の所有権は債権譲渡後もローン会社に留保されたままという契約になっていることがあります。

 結論としては、自動車ローンについては消滅時効を主張をして認められることもあります。ただ、自動車自体の所有権がローン会社かディーラーにある場合、その車両の返還を求められる可能性もあります。事案によっては、損害賠償請求がされる可能性もあると思います。

 通常は自動車ローンの返済を滞納をすると車は、所有者であるローン会社かディーラーが「引き上げ」をします。引き上げ後は車の残ローンから、一定割合が控除されて残りを支払う必要があります。

この場合もローンは一定期間が経過すれば時効となり、その主張ができます。車を引き上げられる場合はいきなりローン会社やディーラが抜き打ちで車を持ち去るということはほぼ無く、引き上げ日を決めて、予定日に引き上げが実施されます。

 自動車ローンの時効の主張も当事務所は手掛けていますが、支払状況によっては、遅延損害金を除いて元金だけで140万円が超える場合もあり、その場合は認定司法書士の代理権から外れてしまいますので、弁護士にご依頼ください。

 当事務所にご相談の際は、車のローン残金が遅延損害金の部分を除いて、元金部分で140万円以内の場合にお願い致します。


《車の廃車と時効援用》

 車のローンを延滞しており、「車を廃車にしたいが所有者が信販会社なので出来ない」というお声を聞きます。または、「車は既に無い」ということもあります。弊所では、車のローンの時効相談も相当件数お受けしています。

 取扱事例を挙げますと、オリエントコーポレーション(オリコ)が債権者の場合、オリコに対して時効援用を行います。債務が時効になっても所有権は時効になりません。

 債権者が車の引き上げをせず、所有権を放棄して頂ける場合、所有権の解除書類一式を請求できます。弊所が対応した事案のほとんどは所有権放棄をしていただいています。

 弊所が所有権解除の対応をした場合、名義変更に必要な書類の交付があれば依頼人にお渡ししますので、陸運局でご自身に所有者にする名義変更をしたのちであれば廃車が可能です。(名義変更手続がよく分からない方はお近くの行政書士にご依頼ください)

 トヨタファイナンスの場合は、ディーラー販売店が所有者になっています。トヨタファイナンスに対して時効援用後、トヨタファイナンスから販売店に連絡をしてもらい、販売店に所有権解除をしてもらうことが多いです。


《リース契約と時効援用》

 リース契約から生じた延滞債務の時効援用で取扱事例が多いのが、コピー機等の事務機器です。

 契約形態は様々なので一概に言えませんが、連帯保証人がついていることが多いです。主たる債務者から時効援用をすると付従性により、連帯保証債務も消滅します。

 リースを受けた事務機器をどうするかという問題もありますので、経験豊富な弊所にご依頼ください。


 《代位弁済の求償権と債権譲渡の時効の起算点の比較》

 最近あった事案ですが、代位弁済による求償権の時効についてです。

 銀行を例にしますが、銀行からのローンには保証会社が付いています。銀行のお金を借りた方の返済が滞ると、保証会社が銀行に一括弁済をします。これを代位弁済と呼びます。この時に「代位弁済通知書」が送られてくるはずです。そして、保証会社が代わりに支払った借金の返済を滞納者に求めてきます。これを「求償権」と呼びます。求償権の時効は、銀行への支払いが滞ってから約5年で時効ではありません。求償権の時効の起算点は「保証会社が代位弁済をした時から」約5年となってしまいます。

 比較して、滞納した債権については「債権譲渡」がなされる場合があります。債権譲渡の場合は銀行への支払いが滞ってから約5年程度で時効です。(異議をとどめない承諾の場合)貸金業者や信販会社のフリーローンの場合は無担保無保証で保証会社がついていないことが多いですので、債権回収会社に債権譲渡されることが多いです。

 なお、最高裁昭和60年2月12日判決により、「信用保証協会」は会社ではなく、信用保証協会の求償権の時効期間は、10年です。但し、最高裁昭42年10月6日判決により、商人である主債務者の委託に基づいて保証契約がなされている場合の求償権は商事債権となり、5年の時効期間が適用されます。


《信用金庫からの貸付の消滅時効期間》

 銀行から個人が借入をすれば消滅時効が5年であることに対し、信用金庫から個人が借入をした場合の消滅時効は「10年」です。(最裁昭和63年10月18日判決) 信用組合や信用協同組合についても同様です。(最裁平成18年6月23日判決)債務者からすればお金を借りるということは同じでも借入先によっては時効の期間が異なりますので注意が必要です。

 信用金庫と銀行で消滅時効の期間が異なるのは設立の目的が異なり、信用金庫は商人ではないことから民法上の消滅時効の期間が適用されるからです。ただ、借入をした方が会社であったり、事業目的での借り入れの場合は商行為によった債権となり5年の消滅時効にかかることがあります。


《信用保証協会の求償権の時効期間》

 最高裁昭和60年2月12日判決により、「信用保証協会」は会社ではなく、信用保証協会の求償権の時効期間は、10年です。但し、最高裁昭42年10月6日判決により、商人である主債務者の委託に基づいて保証契約がなされている場合の求償権は商事債権となり、5年の時効期間が適用されます。


 《貸金業者等による大量提訴事件への対応について》

 日本司法書士会連合会から「近時の貸金業者等による大量提訴事件への対応について」、文書による知らせが来ております。貸金業者又は債権回収会社が、東京や大阪など大都市の簡易裁判所において、日本全国の借主を被告とする貸金請求訴訟又は譲受債権請求訴訟を大量に一括して提訴しているということです。訴訟になっている案件のうち、争えば時効を主張できるであろう債権も相当数あります。

 当事務所でも東京簡易裁判所など大都市の簡易裁判所に訴えられた方の訴訟代理が増えています。最近、支払督促という裁判所上の手続きで、債務者の地元の簡易裁判所で手続きがとられているケースも受任しましたし、今日もサービサーとの訴訟対応や時効の主張の相談が入っています。当事務所では積極的に対応しております。訴えられたらすぐに相談して欲しいですが、訴えられる前段階で相談して頂くことをお勧めします。相手は時効を主張させまいと、少しでも返済を求めてくるからです。

 日本司法書士会連合会の同文書によると、強引に弁済を迫って返済をさせることによる、債務の承認行為をさせて時効の主張を封じた上で訴訟をされているケースが相当数あるとしています。時効を主張できる段階になってからでも少しでも返済をしてしまうと、「借金を承認した」ということになるので時効を主張することは出来ない、と債権者は主張します。このような主張が成り立つように債権者はあの手この手で時効の期間が訪れた後も返済をさせようとするのです。

 このような場合でも訴訟で争うことで時効を認められたケースも複数あります。時効を主張できるのに返済をしてしまってもとりあえずはご相談ください。「時効かな?」と思ったらとりあえず返済することを保留して、すぐにご相談頂くことが賢明です。


《参考の裁判例》

 最高裁判所昭和41年4月20日判決には、時効期間の経過後に返済をしてしまうと、債権者に債務者がもはや時効を援用しないであろうという信頼が生じるため信義則により時効援用権を喪失すると判示しています。

 貸金業者やサービサーの中には、この判例を根拠にして、時効期間の経過後に債務者に返済をさせることにより、時効の主張を妨げようとしていると思わざるを得ない対応をしている事例を聞き及びます。

 時効期間経過後に貸金業者やサービサーの求めに応じて返済してしまっても、具体的に事実等を検証することにより、貸金業者等のする時効援用権喪失の主張が信義則上認められないと判断した裁判例が複数存在します。


《執行認諾条項付公正証書を作成したら、商事時効5年の時効期間が10年に延長されるのか?》

 執行認諾条項付の公正証書を作成したら、商事時効の5年であった時効期間が10年に延長されるのでしょうか?結論としては、執行認諾条項付の公正証書を作成しても、商事時効の5年であった時効期間が10年にはなりません。

 民法174条の2の「その他確定判決と同一の効力を有するもの」に執行認諾条項付の公正証書も含まれるかについて、東京高等裁判所昭和56年9月29日判決は、執行認諾条項付の公正証書には、執行力はあるが、既判力がないことをもって「含まれない」としています。

民法第174条の2
 確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。

東京高等裁判所 昭和56年9月29日
 控訴人は、本件金員貸付については公正証書が作成され、該公正証書上、被控訴人らによって右貸借による債権が確認され、かつ、その債務につき執行認諾の意思表示がなされているから、民法一七四条ノ二第一項の規定により、その消滅時効期間は一〇年に延長されるものであると主張し、控訴人主張のような公正証書が存在することは当事者間に争いがない。

 しかし、このような公正証書上の権利については、いわゆる執行力があっても既判力がないから、民法一七四条ノ二第一項に規定する確定判決と同一の効力を有するものにより確定したる権利には該当しないと解するのが相当であるかる、右規定の適用はない。したがって、控訴人の右主張は、採用することができない。


《相続放棄か時効援用かの選択について》

 お亡くなりになった方について、債務の存在が判明した場合、「消滅時効の援用」か「相続放棄」のいずれを行うかを選択できる場合があります。

 相続放棄は、被相続人の債務の全てから逃れることが出来ます。申立の際に、特に債権者を指定をする必要もありません。相続自体を放棄する為です。時効の援用は、時効の成立要件を満たした債権者に個別に行う必要があります。

 相続放棄は、相続自体を放棄する為に、積極財産も相続できなくなります。時効の援用は、相続をした上で、消滅時効の要件を満たした債権者に対して個別に行うので、積極財産は相続できます。

 相続放棄は、同順位の相続人全員が相続放棄をしてしまうと、次順位が相続人となります。時効の援用は、相続人の全員が時効の援用をしたとしても、相続権が次順位に移動することはありません。先に申しあげたように、相続をした上で、消滅時効の成立要件を満たした債権者に個別に時効の援用を行うからです。

 なお、金銭債権は相続の発生と同時に相続人各自に法定相続分の割合で相続されていますので、相続人各自が時効を援用できるのは、自らの法定相続分の範囲にとどまります。


 「とりあえず時効の援用をして、認められなかったら、相続放棄をすればよい」という考えも生じるかもしれませんが、時効の援用をすることが、相続を承認する行為と判断される可能性があります。そうなると、後から相続放棄をすることが出来なくなりかねないリスクが生じる懸念があります。

 また、時効の援用は、消滅時効の要件を満たした債権者に対して個別に行うので、1社に対して時効を援用したとしても、他にも多数の会社からお金を借りていたりした事が後日に判明した場合、それらの会社に対しても時効の成立要件を満たしていなければ、時効援用ができません。その際、時効援用をしたことが相続を承認する行為だと見れば、相続放棄も出来なくなるということにもなりかねません。

 相続関係やご家庭の事情により、選択は様々だと思いますが、基本的に、積極財産も消極財産も欲されない場合は、相続放棄をするのがベストだと思います。

 相続放棄が出来ない場合や、積極財産を相続したいという場合、同順位が全員相続放棄をした場合に次順位に相続権が移動することに懸念があるような場合には、消滅時効の成立要件を満たしているのであれば、時効援用を行うことを検討してみることがよいと思います。

 当事務所では、時効の援用も日常的に取り扱っていますが、時効の成立要件を満たしていない場合も散見されます。相続放棄が出来るのに申立をせず、時効の援用を選択されるのは慎重にされた方がよいと思います。


《和解書兼債権譲渡承諾書の意味にご注意》

 「オリエント信販」の債権を、ティーオーエムが譲り受けたとして、訪問してきて、「和解書兼譲渡債権承諾書」との書類に署名と押印を求められた事案があります。

 まず、和解書に署名押印をしてしまえば、債務の承認行為となり、時効援用は極めて困難になります。債権譲渡通知がなされていないからと言って、債権譲渡自体が無効ではありません。あくまで債務者や第三者に対抗できないに留まります。

 ただ、債務者が異議なく承諾をした場合、消滅時効の期間が経過した債権が譲渡され、債権譲渡通知がなされていなくても債務者は時効を援用できなくなります。民法468条1項において、債務者が、異議をとどめないで債権譲渡を承認したときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することが出来ないと規定しています。

よって、時効を中断させ、かつ債権譲渡にも承諾をさせる為に、「和解書兼債権譲渡承諾書」に署名押印を求めてくるのだと思われます。いずれにせよ、時効期間が経過している場合は、債権者への安易な連絡、返済、署名への押印にはくれぐれもご注意ください。債権者も債務の承認をさせるために色々な手を使ってきます。

 経験豊富な法律家にご依頼をされることをお勧めします。


《認知症の方が債権回収会社から訴えられたら?》

 ご家族の方から、「債務者は認知症である親だが、貸金業者や債権回収会社から訴訟をされたらどうなるのでしょうか?」とご質問を頂きました。

 債権者が大手貸金業者、大手信販会社、債権回収会社であり、かつ小口債権の事案であることを前提とします。それらの債権者は、債務者が認知症である事を知らずに訴訟をすることがほとんどです。訴訟をする前に債務者が訴訟能力がない状態であることを知っていれば訴訟はしないと思います。

 訴訟をされた場合、訴訟能力がない場合は、債務者側が家庭裁判所で成年後見人を選任して頂く事が考えられます。しかし、債権者から訴訟をされた事を契機に成年後見人の選任を自発的に行うことはあまり考えにくいです。債権者が債務者に成年後見人を選任することを強制することは出来ません。

 民事訴訟法35条で、「法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる」とあります。

 つまり、民訴35条の要件を満たせば、訴えた原告(債権者)が、「特別代理人」の選任申立をして訴訟を継続することも可能です。可能というだけであり、遅滞のため損害を受けるおそれがあることの疎明が必要であり、選任の可否は裁判所の裁量で行われます。また、特別代理人への報酬等は、この場合、申立人である原告(債権者)が予納金を納めることになります。小口債権の事案で、貸金業者や債権回収は会社がそこまでする例は聞いたことがありません。

 結論としては、債権者が大手貸金業者、大手信販会社、債権回収会社などの債権者は、訴訟をする前に債務者が訴訟能力がない状態であることを知っていれば訴訟をしないと思います。

 訴訟をされても訴訟能力がない事を示す診断書などを裁判所に提出をすれば、訴訟を取り下げてくる可能性が高いと思います。


《第三者弁済と時効の中断》

 いきなり自宅に貸金業者が訪問をしてきて、債務者は不在であったが、家族の方が驚いて返済してしまったという実例があります。このような場合、時効は中断するのでしょうか?

 債務者の家族が、債務者のあずかり知らぬところで返済をしてしまっても、債務者の時効が中断にはなりません。但し、債務者から家族の方が返済をすることの委託を受けていた場合、時効が中断すると思われます。

 いきなり訪問をしてきて、家族からの返済を受領するような貸金業者であれば、何等かの反論をしてくることが予想されます。ただ、時効期間経過後に不意打ち的に訪問をして、債務者本人が返済したとしても、時効援用をする事が認められる場合もあります。

 不意打ち的な訪問をされて返済をしてしまっても、すぐに時効の主張を諦めるのは早計です。


民法第474条(第三者弁済)
1.債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
2.利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。


《過去に仮執行宣言付支払督促が確定している》

 依頼をお受けして代理人として債権調査をすると時効ではない場合があります。

 「残念ながら、時効ではありませんでした」

 時効が成立していることを期待されている依頼人に、あまり言いたくないセリフです。ただ、時効ではない場合は、返済の交渉で業務を継続することも出来ます。

 通常の時効期間が経過しているか否かについては、債権者からの通知書や本人のご記憶などからある程度の目途はつきます。

 「裁判所の手続きを債権者からされたことはありますか?」と、相談時に聞くようにしていますが、「無い」とお聞きして、依頼をお受けした後に債権調査をすると、「簡易裁判所での支払督促」がなされていることがあります。

 訴訟をされたことは覚えていらっしゃる方は多いですが、「支払督促」がされている事をご認識されていない事が多いです。(ロ)の事件番号で確定していますので、当時、書面を無視をされた可能性が高いです。

 訴訟をされても、支払督促でも簡易裁判所から書類が届くことが同じですが、支払督促は確定まで2段階の書類が届くのに、訴訟されたことよりも認識されていないことが不思議ではあります。

 もしかしたら、文面が「支払督促」なので、普通の催告や請求と同じように考えて無視をさて、記憶にも薄い?のかもしれません。

 なお、支払督促をされると時効が中断し、再度の時効期間の経過には確定日の翌日から約10年が必要となります。

 ※支払督促には既判力が無い為、支払督促の前に時効の要件を満たしている場合は、その時の時効を主張できる場合があります。


《請求書の「請求額」と訴状の「訴額」は違います》

 「訴状に記載されている「訴額」と、訴訟前に債権者から通知されていた「請求額」とでは金額が違うので何が何だか分からない」というご質問を頂きました。

 例えば、訴訟前の請求書では100万円となっていたのに、訴訟をされて訴額を見ると50万円という具合です。

 簡単に言えば、訴状に記載されている訴額は「元金」だけです。訴額=支払う金額ではありません。

 訴状に記載されている「請求の趣旨」を見ると、通常、元金のほかに「元金に対し**年*月*日から支払済みまで年**%による遅延損害金を支払え」というような文言が入っています。

 遅延損害金は日々増え続けるものですから、金額として明記がされていないだけで、その判決が出れば「請求額」として遅延損害金も含んだ金額でなされます。


《強制執行と時効の中断》

 時効期間が経過していても債権者は確定した判決や支払督促があれば、それをもとに、強制執行をすることができます。原則、強制執行があると時効が中断します。

 時効を言えたのにそのままをして、強制執行をされて時効が中断してしまった事例がありました。時効期間が経過したら早めに時効を主張しなければ、大変なことになることもあります。

 当たり前ですが、強制執行は突然にされます。「早めに時効の依頼をしておくべきだった」と思われても後の祭りです。時効が主張できるのに、放置することはリスクでしかありません。


《債権回収会社が簡単に債務カットに応じるというのは誤解》

 ネット上の情報を見られて、「債権回収会社は債権を簿価の数パーセントで債権譲渡を受けているのだから、大幅免除の和解ができるはず」と、思われている方がいます。

 まず、私の取り扱っている業務は、元は消費者金融、信販会社、銀行など金融機関の小口債務です。元金が100万を超える事案はごく少数です。(遅延損害金を付するとかなり多額になる場合はあります)

 ネット上の「債権回収会社は交渉次第で債務の大幅な免除をしてくれる」という情報は、比較的金額の大きい事業での借入等、だと思われます。私の経験の範囲では、債務の元金を割り込んで和解に応じてくれる事案は、ほとんどありません。それどころか、債権者によりますが、遅延損害金も全額免除させること自体、難しいです。


 遅延損害金の免除どころか、分割払いに応じてもらうことさえ、相当な労力をかけて交渉することもある位です。「分割金額が妥当と思われる理由を示してください」と言われる場合もあります。こちらがいくら「*万円しか資力がない」と説明をしても「じゃあ、和解できません」と冷たく突っぱねられることがあります。

「債権者も毎月いくらかでも弁済があれば、ないよりかはましだから、和解に応じるだろう」という考えは通じません。債権者の担当者に金銭的なメリットがある訳ではないので、会社の方針が優先されます。

「元金だけなら返済できる」「長い間、請求がなかったのに」とおっしゃる方もいますが、元金どころか遅延損害金も正当な請求ですので、放棄をしてくれるか否かは債権者次第です。


《刑務所に服役中の消滅時効の進行》

 刑務所から出所された方から、借金の時効のご依頼を頂くことが多々あります。刑務所に服役されている間も民事上の時効は進行します。ただ、債権者も、服役されている方に対して民事訴訟を行う等の時効中断行為を取ることもできます。

 なお、私は、どのような理由で刑務所に服役されていたかを聞くことは、まずありません。ご依頼頂いた業務を遂行する上で必要とする以上に立ち入って聞かないようにしています。ご自身から多少話される方もいますが、守秘義務がありますので、ご安心ください。



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