「んナ〜ミすわぁ〜んvv ロビンちゅわぁ〜んvv おやつですよ〜v」
甘ったるい声でナミとロビンを呼んでいる。
そして、レディ2人への砂糖菓子のような甘い美辞麗句。
うらやましいけど、うらやましくない。
そう思っているのは、麦わら海賊団の狙撃手・ウソップである。
この狙撃手、DNAレベルで女好きなコックのサンジに片思い中。
好きになってもどうにもならない相手だと分かりながら、ウソップは毎日サンジを見つめている。
少しでも近くにいようと食事の後片付けを手伝ったり、上陸するたびに食材の荷物持ちを手伝ったりしている。
当のサンジはそんなウソップにちょっと手の込んだ飲み物を作ってくれたり、レディ用のおやつの味見をさせてくれたりしている。
だが、それは特別扱いではなく、お礼を兼ねたご褒美。
そうだと分かっていてもそれでも今日も荷物持ちに精を出すウソップだった。
「はぁあ〜」
仕入れた大量の食糧を冷蔵庫にしまうのを手伝った後、ウソップはご褒美のレモンソーダを早々に飲み干すとさっさと男部屋に引っ込んだ。
これまでは、傍にいたいと思う気持ちのままダイニングにキッチンに、何かと理由をつけて居座っていたが、このごろはそれをしないようにしている。
傍にいたいが、仲間として以外の理由で傍にいられないのが辛くなってきたのだ。
サンジから貰える物、言葉、その全てが“仲間”としてのものでしかない。
傍にいられればそれでいいと思っていた筈なのに、いつの間にかそれ以上、いやそれ以外の意味であってほしいと望むようになってしまった。
叶うはずが無いと、諦めながらこの気持ちが消える日を待っているのに。
気持ちはどんどん膨らんでいくばかりで、ウソップ自身「サンジが好きだ」という気持ちを持て余していた。
「いっそ、告白して玉砕しちまった方がいいのかなぁ〜?」
でも、それではサンジを困らせてしまう。
船内の空気を最悪なものにしてしまう。
それだけは避けたかった。
「もうちょっと、綺麗に生まれていればなぁ〜」
夜―。
ウソップはサニー号の洗面台の鏡に自分を映して見る。
褐色の肌、くしゃくしゃの癖っ毛にまん丸の目。
長っ鼻にたらこ唇。
痩せた薄い身体。
いい男とは言い難い容姿。
両親を恨む気持ちは微塵も無いが、それでももう少しサンジにつりあう容姿に産まれたかったと思う。
今の自分では仲間としてならともかく、恋人として隣に立ってほしいなどとは死んでも言えなかった。
「おう、ウソップ。 もう上がったのか?」
サンジがパジャマとお風呂セットを持って梯子を上ってきた。
ジャケットとネクタイは男部屋に置いて来たのだろう、今のサンジはシャツとスラックスだけだった。
サンジのスタイルの良さが際立つ姿に見惚れそうになったウソップは慌てて目を逸らす。
「あ…風呂? あ、ああ。 もう入った」
「なんだ、一緒に入ろうと思ったのに」
「は…?」
―サンジが男と風呂に入ろうと思った?―
「たまにはお前の背中を流してやるのもいいかと思ったんだけどな」
シャツのボタンを外しながらニッと笑うサンジ。
―ああ、仲間としてのスキンシップか。―
「ざ、残念だったなサンジ君。 人気者のキャプテン・ウソップの背中を流したがる奴は大勢いてな〜。それには整理券が必要なんだ。さらに残念なことに、その整理券は皆に配布しちまってもうないんだ」
「ほう…。 ちなみに整理券を持ってんのは誰だ?」
「え…? ぞ…ゾロとか…?」
「ああ!?」
サンジの表情と雰囲気に、何かがヤベーセンサーの強い反応を感じたウソップは「じゃ! そういうことで!」と脱兎のごとく逃げ出した。
「あ〜。 ビックリした…」
いくら仲が悪くても自分の背中を流す権利まで争わなくてもいいだろうに…と思うが。
―あ、そうか…サンジはゾロのことが…―
思いもしなかった答えにウソップは愕然とした。
―いいじゃないか。 いい男同士お似合いだ―
今度こそ本当に諦めなければとウソップは思う。
ウソップは痛む胸を押さえて蹲る。
してきたつもりの諦める準備がつもりでしかなかったと思い知ったウソップだった。
ウソップはメインマストのウソップ工場支部に座って月を見ていた。
まん丸のキレイな月。
手が届きそうなぐらいに大きな月。
でも、触れることは決してできない。
まるでアイツのようだと。そう思うだけで涙が出てくる。
好きにならなければよかったなんて思いたくない。
そうでなければ悲しすぎる。
良い恋をしたとは言えないが、それでも好きになって良かったといえる日が来ると良い。
そう思いながらウソップは男部屋へ向かった。
男部屋へ入ると、サンジがソファに座っていた。
「何だ、サンジ。 まだ起きてんのか」
ウソップが何でもない振りをして声をかける。
サンジは答えずにどこでもないどこかを見つめている。
心ここにあらずといった感じだ。
「サンジ…?」
「ウソップ…」
呟くようにサンジがウソップを呼ぶ。
ウソップにはその声が寂しげに聞こえてどうかしたのかと心配になる。
「サンジ? どうしたんだ?」
ゾロがいない寂しさは埋めてはやれないだろうが、それでもサンジのためにできることがあれば、何だってしてやりたい。
ウソップは心からそう思って、サンジの前に座った。
「ウソップが好きだ」
サンジが悲しげに泣いているような笑っているような顔でそう言った。
ウソップは突然のことに驚いて丸い目を更に丸くしてサンジの顔を凝視した。
「お前がゾロを好きなのは分かってる。 こんなこと言われたって迷惑でしかねぇって…。でも、言いたかったんだ。 この気持ちをどうにも抑えることが…………?」
サンジの顔を凝視したままのウソップの目から涙が溢れていた。
「ウソップ!? な、泣くほど嫌だったのか?」
慌てるサンジの言葉にウソップはブンブンと首を横に振る。
「ごめん…サンジ、ごめん」
「いや、お前が謝る必要は…」
「違う!」
「ウソップ…?」
「俺が好きって言葉を…あんな悲しい顔であんな悲しい声で言わせちまった…俺もサンジのこと好きなのに…ゴメン」
「お、俺を…?」
サンジの言葉にコクンと頷いてウソップは答えた。
「お前、ゾロのことが好きなんじゃなかったのか?」
「何でそうなるんだよ!」
「だって! テメェ、最近あのマリモ剣士とばっか一緒にいただろ!しかも、背中流す整理券を持ってるとか言うし!」
「それは単なる冗談だ!ゾロと一緒にいたのだって、仲間としてでしかお前の傍にいられないのが辛くなったからだ!そんな意味でゾロのところにいたんじゃねぇよ!」
「だったらもう奴に近づくな!ずっと俺のところにいろ!」
ウソップを腕に抱きこみながらの命令口調。
だけど、その声は“お願い”だった。
「うん…。 サンジの傍にいる…」
ウソップはサンジの背中にそっと両腕を回した。
「ごめんな、サンジ。大好きだ…」
「ああ、俺もクソ愛してるぜ…」
自信に溢れたサンジの声。
ナミやロビンに振りまく美辞麗句を言う時の声とは違う甘さを含んだ声だった。
甘く感じるその声に心まで溶かされそうだと思う。
「へ?」
サンジが突然ウソップを抱き上げた。
「サ、サンジ?」
サンジは無言でウソップをボンクに寝かせた。
「ウソップ…」
ウソップの上にサンジが迫ってくると、ウソップはギュッと目を閉じる。
その様子を見たサンジはクスッと笑うと、ウソップの瞼に優しく口付け、ウソップの隣に寝転がった。
「サンジ? あ、あの…」
「ん?」
「こ、これだけ…?」
「これ以上してもいいのか?」
「い、嫌じゃねぇけど…。 いきなりはちょっと…」
「安心しろ。こんな狭ぇボンクなんかでこれ以上はしねぇよ。いきなり全部は勿体ねぇしな」
ウソップの頬をサンジは優しく撫でる。
「ありがとう、サンジ」
ウソップはサンジの胸にギュッと顔を埋めた。
「ウソップ…」
「サンジ…」
サンジはウソップの癖っ毛を撫でると顔を上げさせた。
真摯な瞳にウソップは思わず魅入ってしまう。
「今日から毎晩一緒に寝るぞ」
「は?」
サンジからの思わぬ提案(?)にウソップは間抜けな声が出てしまう。
「マリモとクソロボには半径1メートル以内には近づくな。ヤツ等と2人きりになるなんてもってのほかだ」
「え?」
「チョッパーを抱いて昼寝するのも禁止だぞ」
「あ?」
「ルフィとチョッパーと遊ぶのは1日30分以内しとけ」
「へ?」
「ウソップ工場での作業はなるべく支部の方ですること。キッチンに近いからな」
「はぁ…」
「それから…」
サンジの「俺との100の約束事項」を述べるサンジの声をBGMにウソップは迫る睡魔に身を委ねた。
おもやい堂の鯊乃様から、リンク記念に頂いてしまいました素敵文章ですよvv
「ビター&スイート」と言う、曖昧なワタクシのリクにお応え頂いてしまいましてvvvv
私の作品では、主にサンジ視点が多いのでウソップ視点からの恋の始まりは新鮮でしたvvv
悩むウソップが、可愛いくってもうメロメロですvvvv
鯊乃様ありがとうございましたっvvvvv
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