騒がしい昼食も終わり…おやつが始まるまでの、僅かな間。
それはこの船に置いて、一日の内で尤も穏やかな時間だ。
よほどの事が無い限り、俺を除くクルーは思い思いの時間を過ごしており…先ほどまで
は、テーブルの上一面にチョッパーが薬の材料を並べ、ああでもないこうでもない…と、
薬草の選別をしていた。
それもひと段落着いた様で…キッチンにはまた、独特の静けさが戻っていた。
ガチャリ
と、扉が開いたので…俺はてっきりウソップが来たのか♪と思い振り返れば…
「…なんだ、テメェかよ」
日頃から仲の悪いクソ剣士が、のそりと入ってきたのだ。
「…………なんか用か?」
相変わらずの仏頂面で。
しかし、普段であれば間違いなく眠っている筈のコイツが、わざわざ出向く辺り…
何かしら用事があるのだろう…と考えて、俺は昨夜の事を思い出した。
「テメェ…そう言えばよ………昨夜…」
「ああ。そのコトで、提案に来た」
でなきゃ誰がこんな所にワザワザ…と、言いたいのだろう。
不機嫌を絵に描いた様な顔で、ゾロは椅子へと座った。
俺も丁度洗い物を終えた所だったので、シンクへともたれ掛かりゾロへと向き直った。
「さてっと…提案がどうしたって?」
「……………」
ゾロは手にしていた紙を無言で広げた。
それは、この船の大まかな見取り図だった。
話は昨夜へと巻戻る。
月が明るい夜だった。
その月見を口実にウソップを後ろ甲板へと誘い出した俺は、普段どおりのアプローチを開始。
いつもなら、なかなか素直に応えてくれないウソップも…昨夜は月と酒の効果もあって、結構
良い雰囲気に持ち込んだのだ。
今夜はキメるぜ!!!
と、密かにガッツポーズをキメた俺には気付かず…こう、しっとりと艶を含んだウソップが俺を
見上げてきて…………いざ、キスをっっ!って時だった。
「ん…………あ、ゾロ……」
「ルフィ………」
なんて声が……背後のみかん畑辺りから聞こえてくるじゃねえか!
俺もウソップも、途端に動きが止まり…
ま、俺は別に気にしないから、ささ、続き♪……と思ってウソップを覗き込めば…
「も、寝る………」
と、耳まで赤くなったウソップがつれない言葉。
なんでどうして…と追求せずとも、理由は背後の二人。
今更隠すような間じゃあ無いのに…と、俺は思うんだがウソップにはそうじゃないらしい。
「タダでさえ恥ずかしいのに、あんな音……聞かれてたまるかよっっ!!」
…とまあ、そんな棄て台詞と共に…正しく飛ぶ勢いで逃げていってしまったのだ。
残された俺は、まあ情けないやら悲しいやら。
でも、元凶のヤツ達はお楽しみ真っ最中で…いくら俺が強くとも、今の二人の邪魔をしようもの
なら…ちょっと所か大分、分が悪い。
かと言って、このままココでデバガメする気も更々無く…俺は仕方無く男部屋へと戻ったのだ。
勿論、ウソップはハンモックに蓑虫よろしく潜り込んでおり…俺もソレに倣うより他に術が無かっ
たのが昨夜の顛末だ。
そして、一夜明けての今日。
ウソップはやはり昨夜の事を引きずっている様で、どことなくぎこちない笑顔を浮かべていた。
俺としても、折角のチャンスをフイにさせられた恨みもあってか、今日は肉と酒を少し減らして
やった。
…ま、アイツ達の量から見れば、大差は無いかも知れないが。
そんな事を俺が考えているとも知らず、目の前のクソ剣士は見取り図を広げ終わった。
「で?何を提案しにきたんだ」
「昨夜の事は、すまなかった」
「!」
まさかコイツの口から、こんなにも素直な謝罪を聞けるとは思っていなかったので正直驚いた。
「あ〜まあ、仕方がねェかな。アノ場合……」
なので、昨夜から燻っていた怒りの炎も、鎮火させざるを得なかった。
「で、考えたんだ」
「?」
だから何をだ?と俺が聞く前に、ゾロは赤いペンを腹巻から取り出すと…見取り図にいくつも○印
を付け始めた。
やがて見取り図は…赤い○で囲まれた幾つかの部分に分類された。
大まかに分けると…
後ろ甲板
みかん畑
前甲板
倉庫
キッチン
男部屋
風呂場
見張り台
…の、計八箇所に○が付いている。
「で?コレがなんだって言うんだ」
「キッチンはお前のテリトリーだから、譲ってやろう」
「はあ?」
「その代わり、俺達には男部屋を回せ」
そう言いながら、ソロは赤ペンでキッチンと男部屋に×印を描き込んだ。
「で…まあ、前甲板、後ろ甲板、みかん畑は、見張りの時にはお互い遠慮するとして…」
と、ゾロは一人で呟きながら、その三箇所に△を描く。
その時点で、ようやくゾロが言わんとしている意味が理解出来た。
つまり…昨夜のようなコトが無いよう、事前に取り決めておこうと言うのだ。
ゾロにしては中々に良い思いつきじゃねェか…と思った俺は、提案した。
「オイオイ、待てよ。男部屋は俺達だって使いたいからよ…キッチンと倉庫でどうだ?」
「ああ?なんでだ」
「雨風凌げりゃ良いんだろ?だったら倉庫だって良いじゃねェか」
「ムードって物に掛けるだろーが」
「……アイツでも、んな物気にするのか?」
「ま、極たま〜に…な」
そんな会話を織り交ぜながらも、陣取り交渉は続く。
結果…俺はキッチンと見張り台の占有権を。
ゾロは倉庫と男部屋の占有権を確保した。
他の場所は早い者勝ちがだ、万が一レディ達がいらっしゃった場合を想定して、なるべく上記
2箇所に固めよう…と、最後に決定した。
「ま、昨夜は本当邪魔して悪かったしな…今夜の見張り、ウソップと交代してやるぜ」
「ゾロ……!」
夕食でも酒を減らしてやろうか…と思っていた俺だったが、そんな卑小な考えもその一言で吹き飛んだ。
不敵に笑ったゾロは、見取り図を片手にキッチンを出ようとして…ふと、何かを思い出した様に振り返ると
俺の前へと戻ってきた。
「分かってるとは思うが…今の話は…」
「…二人にゃ内緒って事だろ?」
互いに拳をぶつけ合うと、今度こそゾロはキッチンを出て行った。
「……ま、言うなれば『紳士協定』ってヤツかな?」
無事終了した交渉内容に満足した俺だったが…
今度は別の問題が俺を悩ませていた。
それは…今夜、如何にしてウソップを誘おうか…
と言う、非常に難解な。
けれど、この上無く楽しく
幸せな疑問が…♪
END
HP開設後、初めての書き下ろしだったりします(^_^;)
前々から疑問に思ってたんですよね…狭い船内で、お互いかち合うって事無いのかな〜♪ってネ☆
ま、同人的オヤクソクとして、基本的に二人の世界モード発動中は、邪魔は入らない…ってのは鉄則
なんでしょうが…あえてソコを突っ込んでみました(苦笑)
アホオーラ全開な上に、少々分かりにくいかも知れませんが…所詮私の文なので笑って許して下さい
マセ(^_^;)
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――紳士協定――