サンジはニッと笑うと、俺様をぎゅっと抱きしめた。
柔らかなパジャマの生地越しにサンジの体温を感じてしまい…途端に心臓がドキドキしだす。
抱きしめられた理由もまったく見当が付かず、どうリアクションして良いのやら思考がまともに働いてくれず…かと言って、このまま抱きしめられていたら、それこそ心臓が壊れてしまいそうで…俺様は意を決して…しかし、小さな声でサンジの名を呼んだ。


「な…サンジ………?」
「……んなに、思いつめるなよ」
「!」


心を見透かしたようはサンジの言葉に、正直俺様は驚いたが…そんなのお前らしくねぇぞ、とサンジは言葉を続ける。

「ロビンちゃんだって、良いって言って下さったんだろ?」
「…!……でもよ…」
「それに…もし俺とお前が同じ村で育っててさ…もしも、だぞ?」

同じ思い出があるってのも良いけど、二人ともそっくり同じだったら…ちょっとつまんなくねぇか?とサンジは言った。

「お前も、俺の話聞いて笑ってくれたじゃねぇか」

俺だってウソップの話聞くと、楽しくなるんだぜ?とサンジは続ける。

「皆、違ってて当たり前な人生なんだ。そんな連中が今、こうして同じ船に乗って旅してる…だからこそ面白い。……そうだろ?」

合わせた胸から直に響くサンジの声は、ゆっくりと…しかし確実に、胸の中のわだかまりを解してくれた。


「雪が降ったら…皆で雪合戦しようぜ♪」
「良いな、ソレ賛成♪」


ルフィやチョッパーも喜ぶぞ〜と笑うサンジに、俺様は顔を上げた。


「……ありがと…な」
「…どういたしましてv」


一瞬驚いた様に開かれた目が、すぐに優しい物へと変わり…きれいな青い瞳が真っ直ぐに俺様を見詰める。
海と空の色を映した、きれいなその瞳から目が離せなくなった俺様の前で、ゆっくりとサンジの吐息が近づいてきて……




自然に、唇が重なった。




外気で冷やされたサンジの唇は冷たかったけど、それは俺様も同じで…



「ん……っ」
「…ウソップ……」



背中へと廻された腕が俺様をきつく抱きしめる。
唇の冷たさとは対照的に…火傷しそうな程、熱いサンジの舌が歯列をなぞり…ゆっくりと俺様の口内へ侵入してくる。
二人分の唾液が混ざり合い、微かな水音が生まれる。
耳に響くその音が、まるで体の力を奪っていく様で……唇が離れる頃には、結局二人仲良く床に座り込む格好になってしまった。
キスの余韻から抜け出せないでいた俺様は、サンジの肩に頭を預ける格好でいた。
ふと、視界を横切る物があった。
ひらりと風に舞ったそれは、小さな白い花に見えた。





            「…………………?」





その花は、ふわりとサンジの肩口に舞い降りた…かと思った瞬間、魔法のように消えてしまった。

 

 …………今のは何だったんだ………? 

 

そう思っていると、また同じような花が今度はサンジの髪に舞い降りた。
思わず手を伸ばして触れようとしたが、やはり一瞬にして消え去ってしまった。
…幻?と思ったその時、サンジが俺様の名を呼んだ。



「ウソップ………」
「ん?」



何だ?と思いサンジを見ると、当のサンジは天空を見上げて微笑んでいた。
サンジにつられて見上げた俺様の目に、空から舞い降りる白い雪が映った。
ふわふわと風に舞う雪は、その一つ一つが淡く光を発している様だ。
まだ降り始めたばかりの様で、キッチンの壁に背を向ける格好だった俺様達の側には、少々遅れて到達した様だった。
目の前へと降りてきた雪を受け止めるも、掌の熱であっという間に水へと姿を変えてしまう。
そこで俺様は、毛布で手を覆うと雪を待ち受けた。
やがて、その上にふわりと舞い降りた雪は…先刻と同じく美しい花の形をしていた。
 

 

「………スノー・ドロップだ!」       

 

 

思わず呟いた俺様に、サンジが「?」と言った視線を向けてきた。
毛布に舞い降りた雪を見せながら、俺様は昼間ロビンに聞いた話をしてやった。

「気温がすげぇ低い時にだけ、見られる雪なんだってさ。はら、形が花みてえで綺麗だろ?これを『雪の花』って言ってさ……」
「雪の花なら聞いた事あるぜ?」
「まだ続きがあるんだよ。『スノー・ドロップ』って言ってさ、雪みたいに白い花があるんだってさ。で、ロビンはその花に例えて、こういう雪をそう呼んでるんだってさ」
「へえ…ロビンちゃんにしちゃちょっと子供っぽいけど…流石はロビンちゃん、良いセンスだな」
「だろ?俺様、初めて見たんだ…『雪の花』ってさ…」

ロビンが言う『スノー・ドロップ』も見たことは無いが、きっとこの雪の様に可憐な花なのだろう。
喋っている間にも、無数に花は降り注ぐ。
そのあまりに美しい情景に見惚れていると、サンジが嬉しそうにこう言った。





「お前との思い出…これでまた一個、増えたな♪」





今夜の事、忘れないぜ…と言うサンジの言葉に、嬉しい…とは思ったけど、やはり恥ずかしさの方が先に立ってしまい…俺様は本当に立ち上がった。

「ウ…ウソップ?………怒った…………?」

俺様が怒って立ち上がったと勘違いしたのか、あわててそう言うサンジに「違うって…」と、照れ隠しに軽いキスを一つ…頬にしてやった。
突然の俺様の行動に、かなり面食らった表情のサンジだったが「なら、どうしたんだ?」と改めて聞いてきた。

「皆も起こしてやろうと思ってさ♪こんなに綺麗なのに………見なきゃソンだろ?」
「…そうだな、確かに………でもさ♪」

?と思った俺様を、サンジが再び抱きしめてきた。



「こっ、こらっ……」
「もう少しだけ……このままでいたいなぁ…………」



折角二人っきりなんだぜ〜?と言うサンジの言葉に、またも俺様の心臓はドキドキしだしてしまう。

「………本当に後少しだぞ?」
「やったあ♪」
「本当に、本当だからなっ?」
「解ってますって♪」
「……………………」

早く起こさないと、雪が止んでしまうかも…と思ったが、サンジの気持ちも…まあ分からなくも無く。
そして…本音では、俺様だってもう少しこうしていたかったから…

「なら後、100数えたら皆を起こすからな」
「えぇ〜っ!せめて500にしようぜ?」
「長すぎだ!このアホコック………」

そんな遣り取りをしている間にも、雪は音も無く舞い降りる。
白い空から黒い海へと消えていく白い花達…………
そんな幻想的な美しい光景を…二人の思い出として、少しづつ増やしていく……            

 

 

……それも悪く無いよな……

   

 

そんな事を考えながらも、俺様は雪を眺め続けた。
永遠に思えるこの一瞬を
瞳に焼き付ける様に…………







今更何を書くんでしょう…的心境ですが(^_^;)とにもかくにも懐かしい作品です。
元稿がコピーするために打ち出した物しか残ってなくて、打ち込み作業難航しました…
そして、当時の自分の文章表現がかなり怪しかった事を再確認…(^_^;)よくまあこんな物を堂々と…と、ちょっぴりヘコみもしましたが、まあこれも私の足跡として残しておこう…と思って、アップしてみました。
コピー誌は、ギリッギリまで作業できる強みがあるんですが、如何にせん製本作業がめんどくさ…もとい、大変でして…なので作ったらそれだけ、のかなり限定(にしたつもりは無くとも)本となってしまいます。
読まれた事の無い方は新作として、危篤にも本をお持ちの方は、見比べて変更箇所をツッ込むも良いかと…苦笑



                            
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