Hiding Taste of Love
新しい島が見えれば、それが大きかろうが小さかろうが…兎に角上陸しなくては気が済まないのが、我が船長の信条だ。
「サーンージー!!弁当!!海賊弁当作ってくれ〜!!」
そんなルフィの声が響くが、小一時間ほど前に「島情報」をナミさんが下さったので、弁当の下ごしらえはほぼ済んでいる。
「おーい、サンジ。ルフィが弁当だ……って、うまほーvv」
「おう、ウソップか。分かってるって」
テーブルの上には、定番の唐揚げに肉団子。
卵焼きに人参のグラッセ。
今俺の手元では、タコウインナーが増産されている。
「うーん、弁当ってなんかワクワクするよなっ!俺様、何か手伝える事あるか?」
「おう、じゃぁ弁当箱が半渇きだから水分を拭き取ってくれ」
任せとけ!と言うウソップに乾いた布巾を放った俺は、タコウインナーを炒めに入る。
芳ばしい香りをたてながら加熱されたウインナーは見事なタコ形に仕上がり、皿の上へ鎮座する。
それ程暑い気候でも無いが、一応全部冷ましてから弁当箱に詰めないと…と思っていると、ウソップが拭き終わった弁当箱をテーブルに並べてくれた。
「後は何だ?詰めんのは…お前なりの案があるだろ?」
「あーそうだなぁ……」
と考えていると、丁度ゴハンが炊き上がった。
「お、丁度良い。握り飯作ってくれるか?六人分、18個だ」
「分かった、任せとけっ!」
熱いから気をつけろよ、と俺が言うとウソップはニカッと笑い…この分なら大丈夫そうだな、と思いながら俺はハンバーグに取り掛かった。
弁当用に小ぶりに成形したパテを白ワインでフランベし、ケチャップソースを加え弱火にすると蓋をした。
さて、これで暫く手が空く、と思いテーブルを見遣れば…其処には何とも言えず幸せな光景が広がっていた。
頬に何粒も飯粒を付けながら、無心に握り飯を握るウソップ。
炊き立てのゴハンはまだ熱いようで、時折眉を顰めながら…しかし、実に楽しそうなその様子に頬が緩むのを止められない。
その姿をいつまでも見ていたい…と思いながらも、蒸気が上がってきたフライパンを覗けば、その仕上がりは上々だった。
「し〜ま〜が〜み〜え〜た〜ぞ〜〜〜〜っ!!!」
ルフィの声が響いたのは、それから30分程経った頃。
テーブルの上には、六人前の弁当が完成しており…俺達は偉大な功績を成し遂げたさながら戦友の様に、拳で完成を祝った。
「こんな小さな島…見所は無さそうよ」
と、おっしゃるナミさんの忠告もルフィの耳には届かず…強引に引っ張られるようにチョッパーが。
仕方が無い、とゾロが同道し…何故かロビンちゃんまで「面白そうね」と外出準備を始められるので、結局皆で上陸する事に。
小さな島なので船番も必要ないだろう、と今回は珍しく全員が別行動となった。
気合十分のルフィはゾロの足首を引っ掴んで飛んで行き…勿論弁当はしっかり持って。
残りのメンバーもめいめいに弁当を持参し、気分は探検よりも個人ピクニックと言った風体だった。
「うっし、なら俺様は伝説の泉を探しに行くかな!」
「なら俺は…幻のキノコでも探すかな」
「イヤ、それは止めとこうよ。ちょっ、サンジクーン?」
そんな事を言いながらも上陸した俺達は、一緒に森へと分け入り…多分に俺がキノコを採取しないようにしたかったのだろうが、俺的にはデート気分で最高だった。
特に何かアクシデントがある訳でも無く…丁度昼頃には日当たりの良い岩場に出たので、そこで弁当となった。
「いただきまーすv」
「おう、心して喰え」
ウソップは早速タコウインナーに齧り付き、幸せそうな表情をする。俺は…と迷ったが、まずは握り飯を一口、頬張った。
「…………ウソップ、おまえこの握り飯…どうやって握った?」
「ど、どうやっても何も…普通に握っただけだぞ?」
心底不思議そうに返すウソップ。どうやら本当にその通りなのだろう。
俺は改めて握り飯を見遣る。
形に統一感がなく、大きさもバラバラ。
ラップが無かったら形を保つのは難かしいだろう。
だが一度口にすれば、飯粒がほろりと口中に崩け…具材と共に相俟って絶妙な味を生み出しており。
「な、なぁ…不味かったか?ソレ……」
ウソップの不安げな声で我に返った俺は…慌てて訂正した。
「や、俺が握った物よか美味いからさ…何でだ?って思ってさ」
「へ?握り飯なんて誰が握っても変わらねぇんじゃ……?」
確かに、使用する食材が味を決めるのであって…余程下手くそで無い限り、握り飯は誰が握ってもうまい物だ。
「でもよ、何か違うんだ……俺には出せない味に仕上がってら」
「はっはっは、俺様の愛情タップリだからかな?」
ウソップはそう言った後でしまった、と口を押さえた。
「そうかそうか、俺への愛で溢れてるからこんなにも美味いのかvvvそうだったんだなぁvvv」
「どあーーーーーっ、そそそそそうじゃなくて、イヤ確かに愛は入ってるかも知れねぇけどっ!ちょっと違うんだ!!」
「うーん、ウソップの愛は最高の調味料だなvvv美味いvv」
何を言っても駄目な事は学習済みで…ウソップは耳まで真っ赤になりながら「勝手に言ってろっ!」と弁当を食べ出した。
俺の作る握り飯が『プロの味』と言う物なら…ウソップの握り飯は、いわゆる『お袋の味』と言うヤツなのだろう。
形も大きさも不揃いで、店には出せないかもしれないが…それでもウソップが一生懸命握っていた姿が浮かび、頬の辺りが緩んでしまう。
「……何ニヤニヤしてんだオマエ…」
「ん?あぁ……聞きたいか?」
「や、何か嫌な予感するんで結構です」
そんなつれない恋人に苦笑しつつ…愛の隠し味を頬張った。
「………そんなに美味いか?」
俺があまりに美味そうに頬張っていたのだろう。暫くしてウソップがそう聞いてきた。美味いぞ、と返せば…
「……じゃ、また作ってやっても…良いかな…」
「ウソップ……っ」
「こ、コラ調子に乗るなっ!」
掠める様にキスを一つすると、また赤くなるウソップ。
「もう作ってやんねーからなっ!」
等と可愛げの無い事を言う口は…塞ぐのに限る。
「ウソップvv」
「なんだよっ!」
そう決めた俺は行動を実行に移す為に、再度肩を抱き寄せた。
抗議の声が零れる前に……その唇を塞ぐために。
〜END〜
昨年冬コミにて配布致しましたペーパー書き下ろし物体でございます。
冬なのに何故にピクニックなのでしょうねぇ…未だに謎です(^_^;)
この後、帰宅(?)した皆から「今日のおにぎりは美味しかった」って言われちゃうんだろうなぁ〜
で、ウソップは照れて逃げちゃうんでしょうねきっと(笑)
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