HOT FIGHT









それは丁度、昼食を終えた時の事だった。


「ねえ、ウソップ。ちょっとこの後良い?」


ナミさんがウソップにそう声を掛けられた。
何でも、女部屋に新しく棚を造りつけて欲しいそうだ。



「あら、丁度良いわ。直して欲しいアクセサリーがあるの」


と、ロビンちゃんが会話に加わられた。
手先が器用なウソップは、よく修理を頼まれているのだ。



「待てよ!今日は一緒に魚釣りするんだ!な、チョッパー!」
「ええええ?そ、そうだったのか?」
「おうっ、今決めたんだ!」


なんとも自分勝手な船長の言い分だったが、確かに食後に釣りをする事はよくある事だった。


「ちょっとルフィ、勝手に決めないでよ!私達の方が早かったでしょ!?」
「なんでだよー!ナミだって晩飯に魚あった方がいいだろ?沢山メシ喰えるからな♪」
「あんたが食いたいだけでしょーがっっ!!」


ゾロ!あんたが相手してやってよ!!とのナミさんのお言葉に…半分眠りこけていたゾロが眠そうな顔を上げた。


「お前ら……どうでもイイがウソップの意見は聞いたのか?」


眠りマリモンにそう指摘されて…クルーの視線が渦中のウソップに注がれる。


「ウソップ、勿論アタシ達が最優先よねv」
「何言ってんだ!俺達だぞ!!」


ええと…と、ウソップは引き攣った笑みを浮かべていた。
本来なら助け舟を出したい俺だったが…この空気の中ではとても言い出せない。
何故なら…昼食前にウソップに換気扇の調子を見て貰う約束をしていたからだ。



「あ〜お前達、このキャプテンウソップの助けを必要とするのはまあ、至極当然なのだが…しかし私もこう見えて多忙なのだ」


流石に俺との先約が有る、等と言ったらナミさん辺りに何を言われるかは分かっている様で…
何時もの様にウソップらしい話術で切り抜けようとしているが、今回は上手く行かなかった。



「よーし、こうなったら勝負だ!」
「いいわよ、負けた方は素直に諦めるのよ!?」


目に見えないのに…激しい火花がナミさんとルフィの間で飛び散っているような気がするのは何故だろう。
ウソップの意見は一切無視され…ナミさんはお得意のカード勝負を提案されたが、それでは不公平だとロビンちゃんが指摘され。
しかし、力技ではどうあってもルフィの方に分があり…一向に勝負方法が見つからないまま、時間だけが過ぎていく。

すると、またもマリモンが提案した。


「…我慢比べってのはどうだ?」

「「我慢比べ?」」


なんとも体育会系なその提案だったが、確かに小手先の技術も力も関係ない所での勝負方法だ。


「いいわよ、やってやろうじゃない」
「望むところだ!!」


こうして唐突に、船内がまん大会が勃発したのだった。






                      





キッチンには、今だかつて無い程の熱気が満ちていた。
両方のコンロには、大型の寸胴が掛けられ…中では大量の湯がぐらぐらと煮立っている。
オーブンも温められ…中では大量のクッキーが焼かれているのだ。
コンロ2機にオーブンが稼動していると、中の温度は三十度以上になる。
なのに…換気扇は止まり、扉も窓も閉められ…まさしく中は、サウナ状態だ。

テーブルにはナミ、ルフィ、ロビン、チョッパー、そしてゾロまでもが、思い思いの格好をして座っていた。
まるでここが冬島であるかの様なその格好に…窓の外から様子を伺った俺様は、見ているだけで暑くなってしまった。


「何も『暑さ我慢大会』なんて…うわーサンジのヤツ、ホットミルクなんか作ってら…あああ、見ているだけで暑くなるぜ…」


そう、結局全員が何かしら俺様に用事があった事が判明し…俺様を除く全員が我慢大会に参加と相成ってしまったのだ。


「にしたってよ…あっ、チョッパー…アイツやばそう…」



全身毛皮な上に、寒い国出身なんだから…と見ている前で、チョッパーのピンクの帽子が揺らいだ。
と、同時にサンジが素早く足で受け止め…見事な速さでそのまま扉の外へ脱出させた。


「だ、大丈夫かチョッパー!?」
「うううう、もうだめだぁ………医者ぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


それだけ言い残すと、チョッパーはぶっ倒れた。


「…待てよ、船医が真っ先にぶっ倒れるって事は……まさか」


嫌な予感がこれでもかと言う位に押し寄せ…恐る恐る振り返ったキッチン内部は…死屍累々、と言う表現が一番適切だろう。
全員がテーブルに突っ伏しており…ピクリとも動かないのだ。


「えーっと……失礼しまーす……って暑ッ!!!」


予想以上の熱波が溢れ出し…正直中に入るのも躊躇われたが、このままでは皆がっ!と決心した俺様は…中へ突撃した。






                      





「ウソップー、あたし紅茶飲みたーい」


へいへい、アイスティーな。



「私はアイスコーヒー…お願い出来る?」


おお、いつものモカブレンドな。


「…酒」


水割りか!?ったく…


「お、おれ…」


アイスミルクにしとくな。


「に〜〜〜く〜〜〜」


イヤ、麦茶で我慢しろ!


「…………………」


トマトジュースでいいよな。
目線で「すまない」と訴えるサンジに苦笑しつつ、俺様はキッチンを駆け巡る。
体を冷やすために、と皮袋に氷を詰めた物を皆に配ったり、タオルを濡らした物を掛けてやったり。
全員の飲み物オーダーを作成するには少々手間が掛かるので、取り合えずは冷水をグラスに注いで渡したり…正に目の廻る忙しさで。






「「「「「「ウソップ〜!!」」」」」」






ったく、手の掛かる仲間だ…と諦めつつ俺様は叫ぶ。


「ちょっと待て!いくらなんでも一気にはムリだ!!」




有る夏の日の、そんな話し☆







                        〜END〜









2006年夏の増刊ペーパーに書き下ろした物です。
この暑苦しい最中に、更に暑い物を書き上げるあたり…頭悪くてすみません(^_^;)
サンウソって言うよりかは、ウソアイドルって風味ですがソコは根底にサンウソを感じながら
読み進めて頂けたら嬉しいですvv

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