シャワーの湿気が残る髪をバスタオルで包み、俺様はベッドへと腰を降ろした。
サンジはまだバスルームで…後始末をしていてくれる。
冷蔵庫から水を出し一口含めば、如何に自分が乾いていたかを発見し…ごくごく、と喉を鳴らして飲み込んだ。
少しは甘い味が消えたかな?とも思ったが、部屋にはまだチョコの香りが漂っており…
風呂場での行為を思い出し、赤面してしまう。
ヤっている最中は…その、何だ。サンジの魔法…みたいなものに掛かっているのだろう。
始まってしまえば後は最後までイッキなのだ。がしかし、こうやって自分が戻ってくると…途端に恥ずかしさが増してしまうから、質が悪いのだ。
「…チョコ、当分見たくねぇかも……………///」
ははは、と自嘲的な乾いた笑いが出たが…その当分見たくないモノが、実は冷蔵庫に入っているのだ。しかも…渡す相手はサンジその人なのだ。
どうしてあの時。
サンジが帰って来たあの時に、すぐにでも渡しておかなかったのだろう。
俺様は、冷蔵庫の中に入れておいた包みを取り出した。
今日、買ってきたチョコを俺様なりに考えて造りなおした…まあ、イマイチな出来栄えをカヴァーする意味も込めてラッピングには時間を掛けた…バレンタインチョコだ。
「…つうか、こんなん貰っても…アイツ喜ぶかな……」
良く考えてみたら、アイツは言わばプロなんだし…チョコだって、サンジに調理して貰った方が幸せなのではないだろうか。
そんな事を考えて…頭をブンブンと振った。
なんと言っても、バレンタインなのだ。
かなり恥ずかしい思いもして用意したのに、ここで諦めてどうする!?
絶対渡すぞ〜っ!と、自分に言い聞かせた瞬間…がちゃり、とバスルームの扉が開く音がした。
途端、心臓がドキドキしだし…今決心したばかりだと言うのに、その効力はあっという間に霧散してしまう。
包みを胸元へ隠すように…背中を向けたままでいると、サンジは俺様と同じように冷蔵庫から飲み物を取り出した様で、移動する足音や扉の開閉する音などが妙に大きく感じられてしまう。
一体なんと言って切り出せば…!?と、心底パニック状態になっている俺様に、サンジが話し掛けて来た。
「もしかしなくっても…怒ってる……よな?」
はい?
「や、オマエの言うとおり…部屋行けば良かったんだけどよ?」
…ああ、確かにそんな事を言った記憶が……あるには有る。
だけど、あんな事をココでシテたら…確実に寝る場所が無くなる上に、翌朝宿屋の人になんと言い訳すればイイのやら……だ。
だから、逆に風呂場の方が良かったのだが…サンジは俺様がその事で怒っている、と勘違いした様だ。
「その…最初は、アレも使うつもりじゃなかったんだけどよ…」
多分も何も…チョコペンの事を言っているのだろう。
「オマエが溶かしすぎるの、目に見えてたからよ?だから、この際全部使っても良いかな…って思って持って入ったんだ…」
だから、あんな絶妙なタイミングで…残りのチョコペンがホイホイ出てきた訳だ。
まあ、最終的には……その…俺様もツカッチャッタから…その件に関しては、追求しようとも思っていなかった。
そんな事よりも…今は、この包みをどのタイミングで渡すかが、最重要事項な訳であって…なので黙ったままの俺様に、サンジはまたも勘違いし…
「………も、寝るか?その…辛かったら、明日は俺一人で買出し行くからよ…」
声のトーンから、サンジの気持ちが痛い程伝わって来て…ギシリ、とベッドの軋む音がした事で、サンジが自分のベッドに座ったのが分かったから、俺様は立ち上がった。
「…ウソップ?」
「サンジ、これ……やるよ」
包みを差し出すと…サンジは心底驚いた顔をしていた。
まぁ、怒っていると思っていた相手からのいきなりの贈り物…では、驚く方が普通だ。
しかし、このまま固まっている訳にも行かず…俺様はサンジのベッドに肩膝を乗り上げて、包みを押し付けた。
「その、さ。別に怒ってた訳じゃねぇし……それに、アノ事は…その、何だ……」
言いたい事は理解しているのだが…なんと言って良いか、適した単語が出て来ないのだ。
そんな俺様の様子に、サンジはようやく自分が勘違いしていた事に気付いた様で…
「ウソップ、コレって……チョコ?」
「……お、おぅ」
不安げに曲がっていたサンジの眉毛が、ピン、と元気を取り戻した。
いや、口元もニマ〜ッと、歪んで…見える。
と、言うか…つくづくコイツの顔面は、何で構成されているのだろう、と思う。
ナミ相手の時とはまた違う…が、確実に人外の様相を呈しているから。ま、これはこれで、見ていて飽きないと言うか…
「ウソップ、今開けても良いか?」
「…う、あんま上出来じゃねぇけど…」
「手作りなのか!?感激だ〜っ!!!」
や、溶かして固めただけだぞ…との俺様の言葉は、最早聞こえていても意味を成さない様で、サンジの指は丁寧に包装を剥がしていく。
見覚えのあるナカミが顔を出し…甘い香りが強くなった。
「…トリュフ?」
「お、おう…その、オマエ程上手くないけど…」
形は不揃いだし、表面はデコボコだし…時間が無かった事も要因ではあるが…それでも、一生懸命作ったのだ。
そんな俺様のチョコを…サンジは一粒、摘まみ…俺様の見守る前で、口に運んだ。
ゆっくり租借するサンジの表情からは、美味いともそうでもないとも読み取れず…採点を待つ生徒の様な心境で、俺様は待った。
「ウソップ、コレすっげー美味いぞvv」
「…ほ、ホントか?」
「なんだよ、俺の舌を信用しないって言うのかよ」
そういう訳じゃ無いのだが…何せ、製作工程は口にするのも憚れる程だったから…
「…じゃあ、コレなら信じられるだろ?」
「へ?」
ふわり、とチョコの香りが強まり…サンジの悪戯っぽい光を湛えた瞳が近付き…
唇が、重ねられた。
半溶け状態になった小さなチョコが、サンジの舌に乗せられており…濃厚な甘みとカカオの香りとが一緒になって、口中に広がった。
「…な、すっげー美味いだろ?」
「………///」
確かに、今まで食べたどのチョコよりも甘く…そして美味かった。
「もう一個、喰うか?」
「………ウン」
ギシリ、とベッドが二人分の体重に抗議の声を上げたが…
黙殺された事は言うまでもない。
バレンタインの夜には…
チョコよりも甘いキスを召し上がれvv
END
ギャーッス!と、まず叫んでみました(苦笑)
甘いにも程がありますよね…もう、エロシーンよりも甘々シーンの方が書いてて恥ずかしいってアンタ…(誰に向かってだ!)こう、こそばゆいと言うか、ムズかゆいと言うか…ぶっちゃけ、部屋を転がりまくりたい心境です。
3241HITという事で、どんとこーい!状態で受け付けましたリクでしたが…まさかこんなにも長くエロく甘くなるとは…恐るべし!3241マジック!!
長らくお待たせしましたきりり様!こないな駄作でよろしかったんでしょうか…って言っても、まだこの続きもあるんだよなぁ…いえいえ、頑張りますとも!!…遅いのは赦してくださいませ(^_^;)
2006/6/17 須堂 歩