食材辞典 |
『アサリ』 淡水の水が流れ込む砂泥底に生息するマルスダレガイ科の二枚貝。学名をRuditapes philippinarumという。産卵期は春と夏の2回あり、殻の模様もさまざまである。日本でも各地に生息し、加熱することで非常においしいエキスが出る。生息する場所柄、砂を体内に持つことが多く、食す前に海水の濃度の塩水につけて砂抜きをする必要がある。春に取れるアサリが特においしく、日本ではこの時期になると潮干狩りに興ずる人も多い。 アサリは薬効成分が多く含まれることでも知られ、ビタミンB12や、良質のタンパク質であるアミノスルホン酸のタウリンが有名どころ。ビタミンB12は、貧血や肝臓強化に効果的で、消化機能や中枢神経に作用する。また、タウリンは血液中の余分なコレステロールを排出する働きがあり、血液をサラサラにすることで知られている。 イタリア語ではボンゴレと言う。パスタや、リゾットにも良く使われ、ボンゴレスパゲッティは非常に有名である。お酒と良く合い、日本では日本酒で、イタリアではワインで酒蒸しにして食されることが多い。 アサリの語源は、砂底を掘って貝を漁る(あさる)から来ていると言われている。 | |
『アンチョビ』 ペルー沖、地中海沖で取れるカタクチイワシや、ヒコイワシを3枚におろし、塩で漬けて発酵させ、オイルに浸したもの。イタリア料理の隠し味的存在で、刻んだり、煮溶かしたりして使う。 ローマ時代のガルムと呼ばれる魚醤がアンチョビの起源と言われ、ローマ帝国の衰退とともにガルムも姿を消したが、その名残がアンチョビとして残っているとされる。その昔、魚が入手困難な山間部でも、こうして塩漬けにすることで魚と塩分を補っていたそうである。 アンチョビの形態は大きく分けて3種類ある。フィレ、ロール、ペーストと呼ばれる。フィレは、3枚におろしたそのままの形をしており、パスタやピザなどの隠し味に使われる。ロールはケイパーなどが巻かれ、オードブルのトッピングなどに使われる。ペーストはドレッシングや、バター、マヨネーズなどに混ぜてソースとして使われる。 アンチョビは常温で放置すると、発酵が進み溶けてしまうことがあるので、缶詰、瓶詰め、開封、未開封にかかわらず、冷暗所で保存する。開封後は1ヶ月で使い切る。塩気が強いので、材料の表記を鵜呑みにするのではなく、味を見ながら加減して使うと良い。 | |
『イタリアンパセリ』 別名をオランダセリともいう。シソ科の多年草(2年草)で学名はPetroselinium crispum var. neapolianum。イタリアンパセリは葉にちじれのない種類のパセリで、日本で良くお目にかかるちじれた葉のパセリとは親戚のようなもの。イタリアンパセリのほうが香りが穏やかである。香りは野性的で甘味のある香りがする。ビタミンA・C、鉄分などを含み健康にも良い。 5月〜9月頃収穫される。収穫後は必ず7〜8本残すようにすると、次の年も育つ。利用部位は葉、茎共に使え、細かくみじん切りにして用いられることが多い。サラダやスープにフレッシュで使うこともできるほか、煮こみ料理にも使用できる。デコレーションとして飾るのも一般的。もちろんトマトとの愛称は抜群である。 パセリの種類は大きく分けて4つ。モスカールドパセリと呼ばれる日本でも有名なちじれた葉のパセリ。葉の広いイタリアンパセリ。ハンブルグパセリと呼ばれる根の太いにんじんに似た根も葉も食すパセリ。葉柄の部分が大きなナポリタンパセリ。である。 写真のパセリはとあるハーブ園で撮影した。栽培は簡単なので、ぜひとも自家栽培したいハーブのひとつである。 | |
『オリーブオイル』 オリーブの身を圧搾して作られるオイル。大別して、化学処理の一切されていない天然物のヴァージンオイルと、劣化したオイルから香りなどを取り除いて精製し、ヴァージンオイルとブレンドしたピュアオイルの2つに分けられる。ヴァージンオイルといっても、酸化の度合い(=酸価)が少ないほど質が高く、中でも酸価が1%以下のものは、エキストラ・バージンオイルと呼ばれ、炒める揚げるなどの油本来の使い方はもちろんのこと、風味付けの調味料としても用いられる。 風味は、甘口、辛口、スパイシー、フルーティー・・・など、産地や製法、季節によって大きく異なり、色も緑、黄、オレンジ・・・など、多くの種類がある。産地はイタリアのプーリア地方、トスカーナ地方が有名。日本では、小豆島でオリーブの栽培がされている。 オリーブオイルの成分の大部分は、他の植物油と同じく不飽和脂肪酸であるが、その主成分はオレイン酸である。オレイン酸は悪玉コレステロール値を低下させる働きがあり、動脈硬化の予防などに効果的である。また、ビタミンE、ポリフェノール、葉緑素などの抗酸価物質も含まれ、酸化されにくいため、胃にもたれにくい。これらの成分も動脈硬化の予防に良いことが知られている。 ちなみにオリーブオイルはこのページのタイトルでもあり、イタリア語でOlio d’oliva(オリオ・ドリーヴァ)/Olio di Oliva(オリオ・ディ・オリーヴァ)と言う。 | |
『オレガノ』 味はほろ苦く、強い香りが特徴のハーブで、オリーガノとも言う。トマトとの相性が抜群で、トマトソースのパスタやピザには欠かせない。一般に乾燥物のほうが香りが強く、イタリアではほとんどが乾燥した状態で使われる。熱に弱いので、特に煮込み料理には乾燥したものを使わないと、香りが飛んでしまう。フレッシュの場合は、細かく刻んでドレッシングなどに使うと良い。生のまま加熱すると、苦味が強くなってしまう。相性がよいのはトマトだけではなく、チーズ、鶏肉、ラム肉、卵、魚などにもよく合う。一般に匂い消しに使われることが多い。 イタリア調理はもちろんのこと、地中海沿岸のヨーロッパでもよく使われる。また、メキシコ料理のチリパウダーにも欠かせないハーブである。 オレガノとは、山の喜びと言う意味で、昔は地中海沿岸の山や丘に生え、人々の舌を楽しませたことから、この名前がついたといわれる。原産国はフランス、ギリシャ。しそ科の多年草だが、寒冷地では1年草である。 | |
『海塩(結晶塩)』 料理に必要不可欠なもののひとつに塩が挙げられるが、一口に塩といっても、海塩、岩塩、湖塩など、採れる場所によって成分が異なってくる。パスタに使用する塩は、自然海塩が望ましい。自然海塩は、海の成分であるミネラル分(生理活性のある無機物)が多量に含まれるため、塩の主成分である塩化ナトリウム(NaCl)を単体で食すよりしょっぱくなく、旨み、甘味、苦味を含み、味にに深みを出すことができる。日本の食卓で見かけるいわゆる食塩も海塩を使用しているが、電気的処理をするイオン交換法によって生成されるため、ミネラル分はほぼ除去されてしまっている。一方、自然海塩の生成は、天日干しまたは釜で煮詰めて結晶化させるため、ミネラル分が多く残る。また、再加工塩であっても、生成した食塩にミネラル分を添加するので自然海塩と同様に使用できるものもある。 ミネラル分の代表的なものは、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウムである。共に生体に必要なミネラルとして知られている。中でもカリウムを摂取することは、高血圧対策になるとされるが、多量に摂取すると心臓や腎臓に負担がかかるらしい。最近では健康ブームにのって、ミネラル分を含む塩が健康に良いとされるが、実際に含まれる量はごく微量なためそれほど期待はできないと思われる。 しかし、ミネラル分が味へ与える影響は大きく、特にパスタのように、素材の味が良くわかる料理には是非自然海塩を使いたい。 写真の塩は、フランス原産のセル マラン ド ゲランドの塩(あら塩)である。やや灰色がかった色で、フランス・ブルターニュ半島南部のゲランドの塩田で、古代からの伝統製法によって作られた食塩である。顆粒のものもある。 | |
『白インゲン豆』 煮こみや、豆のスープ良く使用される。日本でも裏ごしをして和菓子などに使われることが多い。16世紀にヴェネト近辺で栽培されたのが、イタリアの白インゲン豆の始まりだと言われている。種類も多様で、ツルが伸びるものから小型のもの、豆の形も球形,腎臓形,楕円形とあり、表皮の色も赤色,白色,黒色,斑紋とさまざまである。地方で使用する種類が異なり、トスカーナ州を境にして北はボルロッティ系、南は白のカンネッリーニ系を使用する。トスカーナ州には、トスカネッリというカンネッリーにより小ぶりなものがあり、良く使用される。 白インゲン豆は、ダイエットに効果的であることがしられている。α-アミラーゼという、体内の炭水化物をグルコース単位に分解するときに働く酵素の作用を阻害して、脂肪の蓄積を防ぐといわれている。しかし、体に必要なビタミンや他の栄養分の吸収を疎外する心配はない。炭水化物をカットできるため、ダイエットのみならず糖尿病にも効果的らしい。 キドニービーンズと呼ばれることもあり、学名をPhaseohus vulgarisと言う。トマトや豚肉と煮こむとおいしい。左の写真は普通のインゲン豆。 | |
『唐辛子』 唐辛子の種類は実に豊富である。世界各地で土地や風土に合った品種に改良され、さまざまな料理に用いられている。主に辛味を持ったものが多く(ピーマンのように甘いものもある)、香辛料として使われる。色は黄色いものから緑、赤、紫などと様々で、彩りに使われることも少なくない。その色の綺麗さゆえ、観賞用としても育てられている。 唐辛子は、ナス科の一年草で、熱帯では多年草である。学名をCapsicum annumという。原産国は中南米で、大航海時代コロンブス等により1493年にスペインに持ち込まれ、急速に世界各地に広まった。辛味の正体はカプサイシン類(カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン)という辛味成分で、この含有量で唐辛子の辛さが決まる。このカプサイシンには、血行を良くしたり、唾液や胃酸の分泌を促して食欲を増進させる働きがある。また発汗をうながし体温を下げる作用があるため、熱い地方では特に好んで食される。カプサイシン類のほかにもカロチン、ビタミンB1、B2、Cを多く含む。 イタリア料理では、特に小ぶりな種類が使われる。小さいほど辛いとされ、多くは乾燥した状態で保存し、一年中を通して使用される。イタリア語で赤唐辛子はペペロンチーニ(peperoncini)という。にんにくと赤唐辛子を使ったシンプルなパスタ「アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーネ」はあまりにも有名である。 | |
『トマト』 イタリア語でポモドーロという。ポモドーロとは、黄金のりんごと言う意味で、大航海時代に、ヨーロッパで初めてトマトがお目見えしたときは、黄色い身であったからだと言われている。当時、ナポリの南にあるヴェスヴィオ山のふもとで観賞用として栽培されていた。しかし、この土地は太陽の照りがよく、また、火山灰地であるため、トマトの栽培に適しており、黄色かったトマトも赤くジューシーなものとなり、やがて食用として栽培されるようになったそうである。今では、パスタにはなくてはならないものの一つとなっている。 種類も豊富なトマトだが、パスタに使われるトマトは大別して、生食用とソース用の2つに分けられるだろう。生食用は我々もよく目にするが、イタリアでは、大きく丸みを帯びた「マルマンデ」、大きくて香りの良い「ジョイア・デッラ・メンサ」、甘味の強い「カモーネ・サルド」などが有名である。ソース用は、ホールトマトの缶詰でも使われる長細い形の「サンマルツァーノ」が有名。ナポリのサンマルツァーノという町で作られる、20世紀初頭に登場した歴史の浅いトマトである。トマトにはそのほかにも、「ポモドリーニ」「ポモドーロ・ヴェルデ」「リオ・グランデ」と言った種類があり、それぞれ味・個性も違い、用途も様々である。植物学的にはナス科・トマト属に属し、学名はLycopersicon esculentumと言う。日本では1年草だが、熱帯では多年草である。 | |
『ニンニク』 ニンニクの歴史は非常に古く、古代エジプトにまでさかのぼると言われている。今では世界各国のどこの料理にも使わている。スコルジニンとアリシンという成分が含まれており、スコルジニンは栄養素を燃焼させてエネルギーに変える働きがあり、アリシンは胃腸の働きを促進させる効果がある。そのほかにもいろいろな効果があると言われ、古くから薬としても利用されてきた。 香りが非常に強いが、匂いのもとであるアリシンは、タンパク質や脂質、糖質と非常に結合しやすいため、共に調理することで匂いを抑えることができる。同時に、旨味を増す効果もある。 料理に使うときは、香りを多くつけたければ、みじん切りで使用し、あまり香りを強くしたくないときは、丸ごと軽くつぶすか、そのまま使用する。パスタではオイルの香り付けに使われることが多い。ニンニクを選ぶときは、よく乾燥し実の詰まったものを選ぶと香りがよい。 学名はAllium sativumという。アスパラガス目ネギ科アリウム属の多年草であるが、一年草のように栽培されることが多い。 ニンニクの語源は、仏教でいう忍辱(=耐え忍ぶ)とされる説や、においを憎むことから来ているとされる説がある。 | |
『バジル』 和名は、めぼうき。イタリア語ではバジリコと言う。パスタ料理やピッツァによく使われるイタリアの代表的なハーブで、さわやかな甘い香りが特徴である。トマトとの相性が非常によく、フレッシュでも乾燥物でも使われる。ただし、フレッシュは加熱すると香りが飛びやすいので、注意が必要である。バジルには、ダークオパールバジル、ブッシュバジル、ホラファバジル、シナモンバジル、スイートバジルなど、たくさんの種類があるが、食用としてよく用いられるのはスイートバジルである。殺菌・消毒・強壮作用の効果があり、脂っこいものに合わせると、さっぱりさせることができる。 シソ科めぼうき属の一年草で、栽培は非常に簡単である。学名をOcimum Basilicumという。放っておいてもひとりでに育つため、家庭でも気楽に栽培することができる。4月頃に種をまき、6月には収穫可能となり、11月頃までは楽しめる。収穫の際は苗の先端を摘むようにすると、そこから新たに枝分かれしてよく増える。 他のハーブと違って、頻繁に収穫するため、肥料を多めに与えると良い。花の咲く前が香りのピークで、花が咲ききると香りが落ちていくので、花が咲いたころには根元から10cm位のところから摘み取り、乾燥させておくといつでも使うことができる。 オリーブオイルと松の実、パルメザンチーズ、ニンニクと共にペースト状にしたものをジェノベーゼソースという。 | |
『バルサミコ酢』 トレッビアーノ種というブドウの果汁を煮て濃縮したモストコットというものとワイン又はワインビネガーをブレンドして、熟成させて作る酢。北イタリアのエミリア・ロマーニャ州、モデナ地方で作られる。熟成させる工程でネズ、クリ、クワ、カシ、サクラ、ニセアカシアなどの樽に1年ごとに移し変えられて香りをつける。とろりとした黒褐色の艶やかな液体で、複雑で芳醇な風味が特徴。まろやかな甘味も感じられる。値段は製法や熟成年数によってさまざまで、熟成期間の長いものほど高価になる。年を追うごとに甘味と風味が増していく。 ドレッシングや肉、魚のソースとして使われるほか、アイスクリームやイチゴなどのフルーツにかけても使われる。年代の浅いものは、煮詰めるなどして酸味を飛ばして使い、12年ものなどかなり熟成したものは数滴をソースとしてそのまま使うのが良い。中間のものは、そのままオリーブオイルなどと混ぜて、ドレッシングなどとして使う。 歴史は古く、11世紀にモデナ、フェラーラ、レッジョエミリアを支配していたエステ家が、国王や貴族に食前酒として振舞ったのが始まりだと言われている。 大別して2種類に分けることができ、アチェート・バルサミコ、アチェート・バルサミコ・トラディツィオナーレ・ディ・モデナと言われる。前者はタンク熟成も認められており、酸度が6%以上、アルコール1.5%以下、糖度は500cc中15g以上を含むもので、カラメルを入れることができる。後者は添加物は一切加えず、12年以上熟成させたもので、検査をパスしたものに限られる。どちらにも共通して言えることは、原料にモデナ・レッジョ・エミリア地区で栽培されたブドウを使用する点である。 | |
『パルメザンチーズ』 しばしばチーズの王様とも呼ばれる。正式には、パルメジャーノ・レジャーノという。日本語に訳せば、パルマ、レッジョ・エミリアのチーズという意味。その昔アメリカを経由して日本に入ってきたため、アメリカ読みのパルメザンが定着した。このチーズ、本来はパルマ、レッジョ・エミリア地方で作られた超硬質のチーズのみをこう呼び、厳しい法規定に合ったチーズでなければならない。規定外のものは、グラナ・パダーノと呼ばれる。 おろし金などで細かくおろして使うことが多い。店ではおろした状態でも売られているが、おろしたてのものは香りが格別なので、できればブロックで買い、使うごとにおろして使いたい。 パルメザンチーズは、2000年以上も前から作られており、相当古い歴史がある。イタリアの北部エンザ渓谷の中腹がその発祥と言われている。主原料は牛乳で、14、5ヶ月くらいから、2年をかけて熟成される。長いものでは4年ものもあると言う。イタリアでも高級なチーズで、熟成した高い値段のものになると、1個が新卒の給料の半分くらいするらしい。とは言っても、日本で見る小さなブロックではなく、直径35〜45cm、高さ18〜24cm、重さ24〜40kgくらいある。 |
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Last Update:2003/11/09
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