| 第27訓 雀豪列伝(3) |
かつての私の上司に凄い人がいた。F井課長(当時)だ。午後4時をまわるとメンバー手配と雀荘の予約をしろと業務命令がでる。しかし、ただの麻雀好きではない。強い。
私は統計を採るのが好きで、「F井課長とその仲間達」の麻雀結果のデータをつけていた。一月単位で清算をしてみるとなんと動いたピーナッツの75%を一人占めしているのだ。これが毎月だからたまったもんじゃない。F井課長はあの頃たしか新車を購入していらした。ハンドルくらいは私の払いのような気がする。
ある日、F井課長は3つも鳴いてしまい、終盤の最終コーナーを苦戦していた。私が国士無双を張っていた時だった。待ちはたしか九索だったか。私は張ってはいるものの自信を持ってテンパイを気取られてはいなかった。リーチ者が1人いて、彼の現物に九索がある。F井課長はツモ番でわずか5枚の中から自信の1打を選択しなければならない。しかしF井課長は放銃することなく流局に成功した。もちろんF井課長はノーテン。私はテンパイで終了。彼の手配には・・・・九索があったのだ。しかも切ってしまえばテンパイだったものを・・・
なぜF井課長は九索を切らなかったのか? 後のインタビューで彼はこう言った。
「切れなかった。国士? そうなの!? わっはははは」
理由はないということか? そんな馬鹿な。しかし理由はあるはずだ・・・・未だに謎である。
私が思うにF井課長の強さは、その強靭な意志にあると思う。「切れない」と直感したら絶対に切らないのだ。私は彼から「洗面器からけっして顔を上げない」、つまりテンパイの誘惑に負けない強さを学んだのだ。
F井課長。いつか必ず振り込ませてみせる。